5月3日の『波乱万丈』、『復讐者に憐みを』上映後には、パク・チャヌク監督と弟のパク・チャンギョン監督も登壇。ふたりが共同監督を務めた『波乱万丈』のキャスティングに隠されたエピソードが語られた。

 この映画のなかでイ・ジョンヒョンは韓国のシャーマンである巫女を演じているが、実はこの役、ドラマ『おつかれさま』のムン・ソリが演じる予定だったとのこと。しかし、撮影当日に妊娠していることがわかったため、パク・チャヌク監督に「できない」と電話がかかり、困った監督がダメもとでイ・ジョンヒョンに電話。歌手活動中心で演技をしたいと渇望していたという彼女がそのまま現場に駆けつけ、見事、難役を演じ切った。

 それをきっかけに、俳優イ・ジョンヒョンの実力に再び注目が集まり、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)や『別れる決心』(2022年)といった作品へとつながっていったそうだ。パク・チャヌク監督も満足の仕上がりだったようで、「映画、ドラマを合わせたなかでも一番好きな作品」と笑顔を見せていた。

 ここ数年は、料理バラエティ番組『新商品〜コンビニレストラン』(KBS Worldにて放送中)で、夫とふたりの子どもとのおだやかな生活や料理の腕前を披露してきたイ・ジョンヒョン。今回の映画祭では、カリスマティックな演技力と骨太の演出力を見せ、多面的な人間像に改めて驚かされた。

パク・チャヌク監督(左2)、パク・チョンギョン監督(左3)らとのトークイベント(C)JEONJU IFF

●イ・ジョンヒョンProfile

 1980年2月7日生まれ。1996年、光州事件を描く映画『つぼみ』でデビューすると、青龍映画祭や大鐘賞などさまざまな映画祭で新人賞を獲得。当時、3000人の候補の中から主人公に選ばれたことも話題となった。1999年の発表した1集のタイトル曲「ワ-Come On-」での小指マイク、扇子を使ったパフォーマンスが受け、社会現象に。「テクノの女王」と呼ばれ、その後のK-POPアーティストにも多大な影響を与える。

 日本では2003年に放送された『美しき日々』で注目され、2005年には日本版アルバムも発表している。そのほかの主な出演作として、日韓共作ドラマ『輪舞曲-ロンド-』(2006年)、映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)、『別れる決心』(2022年)、ドラマ『寄生獣 ーザ・グレイー』(2024年)など。

イ・ジョンヒョン (C) JEONJU IFF