対して、扶余のテソにはもともと嫡子がおらず、さらに謀反を疑い次々と粛清したため、信頼すべき身内がいない。同じ王族でも親を粛清されたヨン姫やトジンとの関係も複雑だ。身からでたサビとはいえ、テソにはその寂しさや嫉妬のようなものがセリフのはしばしから感じられる。

 人を信じず、簡単に切り捨てるテソ、権力への野心や嫉妬で裏切りを繰り返すそのほかの部族長たちが跋扈すればするほど、なんとかして子を守り、国を守る王の責任をまっとうせんとするユリ王や、ムヒュルの姿に心動かされるだろう。

 一見、エンタメ重視のアクションアドベンチャー作品のようだが、根底にあるのは、出自を知らないムヒュルとすれ違った家族の和解と絆、王の地位と国を背負う責任の伝承の物語。また、ムヒュルと苦楽をともにし、高句麗を守り引っ張る存在へと成長するマロ(チャン・テソン)やチュパルソ(キム・ジェウク)らの存在も胸を熱くする。もちろん、ムヒュルと敵国の姫ヨンとの切なくもピュアな愛、トジンを交えた愛憎トライアングルの行方も目が離せない。

 演出は、『海神』でソン・イルグクを魅力的な悲しき悪に仕立てたカン・イルス。フィソンやBrown Eyed Girlsらが担当したOSTも名シーンを彩る。

●作品データ

『風の国』Lemino、 Prime Video(ChannelK)配信中

[2008年/全36話]演出:カン・イルス『海神』『新米史官ク・ヘリョン』『ジャガイモ研究所』 脚本:パク・ジヌ『漢城別曲』『ドクター異邦人

出演:ソン・イルグク、チェ・ジョンウォン、イ・ジョンウォン、パク・コニョン、オ・ユナ、ハン・ジニ、キム・ジェウク