ソンとの会話のなかで松重に九州男児を感じた点がもうひとつある。シーズン2の第1話、地鶏の炭火焼きの店を目指して熊本の山道を歩いているとき、ソンから奥さんとのなれそめについて、「松重さんから告白したんですよね?」と聞かれ、「覚えていない」と返したのだ。これも九州男児らしいダンディズムではないだろうか。

 ちなみに韓国で愛情の確認シーンを「覚えていない」などと言ったら、奥さんは大変な剣幕で怒るだろう。

 九州男児のイメージを韓国人に説明するとき、打ってつけな言葉が「釜山サナイ」「慶尚道サナイ」。サナイとは口数の少ない男らしい男。日本の俳優で言えば、1970年代後半から1980年代の高倉健(福岡出身)のイメージだ。日本でもよく知られている韓国歌謡『黄色いシャツの男』の歌詞にサナイのイメージを重ねる韓国人は少なくない。

「♪黄色いシャツ着た無口な男 どういうわけか彼が好き どういうわけか惹かれる 美男じゃないが男っぽい」

『隣の国のグルメイト』は、国も年齢も違う二人の距離が縮まる様子も見どころのひとつだ。韓国の視聴者は松重のキャラクターを尊重しつつも、残り11話でソンの「あ~ん」を受け入れる、またはソンに付き合ってソジュのグラスを一気に乾すシーンを期待しているだろう。

韓国を代表する鶏を焼く料理のひとつ、タッカルビ

 ●配信情報

Netflix『隣の国のグルメイト』独占配信中(毎週木曜日配信)

[2025年/全30話]出演:松重豊、ソン・シギョン