シーズン2に突入したNetflix隣の国のグルメイト』は、日本人と韓国人がおたがいの国のものを飲み食いしてコメントし合うという、ありそうでなかったグルメバラエティだ。

 筆者(日本人)の韓国の知人たちは、この番組は単純に食べ物の知識が得られるだけでなく、日本人と韓国人のメンタリティの違いも浮き彫りになって興味深いと口を揃える。今回は彼らが不思議に思う松重のリアクションについて見てみよう。

■Netflix『隣の国のグルメイト』、韓国人はソン・シギョンの「あ~んして」に応じる松重豊が見たい

『隣の国のグルメイト』シーズン1の初期から、ソン・シギョンは何度も肉料理などをサム(葉野菜で包むこと)して松重豊に「あ~ん」させて食べさせようとしている。しかし、松重はこれをすべて拒否している。

 韓国人にとって、「あ~ん」は二人の距離の近さを示すアクションだ。乳幼児の頃の母親からの「あ~ん」に始まり、兄姉・弟妹間、恋人どうし、夫と妻でもふつうに行われている。

 ソンは、「あ~ん」を松重に受け入れてもらえず寂しそうな顔をする。カメラはそれをしっかり捉えている。これは半分本気で半分演技だと思う。そうすることで二人のメンタリティの違いが鮮明になるからだ。

 そんな松重を「冷たい」「不人情」と思うほど韓国人視聴者は単純ではない。日本の西洋的洗練が韓国よりずっと前から進んでいて個人主義が発達していることを韓国人はよく知っている。韓国人の目に日本人がドライに映るのは今に始まったことではないのだ。ただ、「あ~ん」のシーンは番組的にはとてもいい絵になるのに、なぜ受け入れないのだろうとは思っているだろう。

韓国・木浦のペンションの女将から「あ~ん」してもらう韓国女性

■松重豊と九州男児のメンタリティ

 松重が「あ~ん」を受け入れない理由のひとつに、『孤独のグルメ』の井之頭五郎のイメージがあるだろう。食堂では極力他者と関りをもたずに黙々と食べるキャラクターだ。五郎と『隣の国のグルメイト』の松重は別人格だが、韓国でも大人気の五郎のイメージを松重が意識しないわけがない。

 もうひとつの理由は松重が九州人であることだ。県民性でむやみに人柄を決めつけるのはよくないが、多かれ少なかれ通底していることは誰もが認めるところだろう。「男気」の強い九州男児。しかも、柔道二段で、若い頃は力士を目指したこともある「マッチョ志向」の松重に、幼児を連想させる「あ~ん」は生理的に受け入れがたいにちがいない。