配信サービスでドラマを見るようになって一番迷うのが、膨大な作品リストから何を選択するか、ということ。とにかく、選択肢があまりに多すぎる。その中で作品を選ぶ決め手となるのが主役の存在感。多くの人にとってもキャスティングこそが一番のポイントかもしれない。筆者であれば、カン・ハヌルが主役なら絶対に見逃せない。(以下、一部ネタバレを含みます)

■カン・ハヌルが主役なら見逃せない!Netflix話題作『隠し味にはロマンス』見どころは?

 韓国ドラマには魅力的な俳優がたくさんいるが、カン・ハヌルには特別な愛着がある。彼の演技にはいつも心をくすぐられるし、底抜けに笑える。本当に芸達者である。しかし、彼の演じた役で一番ハマったのは、『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』のオン・ヒョップ将軍だった。

 出番は第1話だけに限られていたが、そこで見せたカン・ハヌルのシリアスな演技は秀逸だった。いつものコミカルな演技とはまるで違う重厚感があり、歴史的な場面でも存在が際立っていた。もしカン・ハヌルに大河時代劇の主役をやらせたら、重みのある演技で高い評価を受けるに違いない。

 しかし、今はそういう流れにはなっていない。『椿の花咲く頃』で演じた警察官ファン・ヨンシクの役があまりに好評だったので、似たような役が多くなっている。新作『隠し味にはロマンス』でカン・ハヌルが扮した「大手食品会社の高慢な御曹司ハン・ボム」も、ファン・ヨンシクと似たようなキャラと言えそうだ。

 ドラマの冒頭では嫌な奴だった。部下に高圧的な態度を取り、自分がいつも王様気取りだった。そして、自分が欲しいレシピがあればどんな汚い手段を使ってでも手に入れようとする。相手のことは一切お構いなしだ。そんなハン・ボムが、対立する兄の差し金によって大ピンチに陥ると、今度は全州チョンジュ)の小さな店に首を突っ込むようになる。

 店の気難しいシェフがモ・ヨンジュ(コ・ミンシ)。彼女は食材を厳選し、創造性豊かな料理を作る。そのヨンジュに極端に影響されて、ハン・ボムも改心したかのような真っ当な人間になっていく。そうすると、本来の好ましい人間性がクローズアップされて、「嫌な奴」から「ナイスガイ」に劇的なキャラ変が起こる。

 こうなるとカン・ハヌルの真骨頂だ。彼は、最悪な出会いからヨンジュに惹かれていく御曹司の心の変化を巧みに演じきっていた。