Netflixシリーズ『広場』が、世界各国で好評のようだ。日本や韓国はもちろんのこと、韓国ドラマの人気が集まりにくいヨーロッパのスペインやドイツなどのNetflix「今日のTV番組TOP10」でもランキングしている。
ドラマのジャンルは、韓国映画で量産されている韓国ノワール。どぎついアクションシーンは若干あるものの、物語は入り組んでおらず、スムーズにぐんぐん進んでいく。全7話で、時間にして約5時間(4時間58分)。長い映画2本ほどの長さなので、思わず一気見してしまう視聴者も多いだろう。
■Netflixノワールアクション『広場』見どころは?ソ・ジソブが華麗なる復活!高身長俳優たちの競演も見ごたえあり
本作はとにかくキャストがすごい。Netflixシリーズに初出演したソ・ジソプをはじめ、『私の完璧な秘書』のイ・ジュニョク、『埋もれた心』のホ・ジュノ、『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』のチュ・ヨンウ、『私が死ぬ一週間前』のコンミョン、『暴君』のチャ・スンウォンといった錚々たる面々が顔を並べている。
あまりに絶賛活躍中のメンツが揃っているため、視聴前は脇役のことばかりに気を取られていたが、実際観始めてくぎ付けになったのは何といっても主演のソ・ジソプだ。原作のウェブトゥーンのファンたちの間では、ソ・ジソプが仮想キャスト1位だったそうだが、納得のハマりぶりである。
来年でデビュー30周年を迎えるソ・ジソプにとって、本作は映画『ある会社員』以来、およそ13年ぶりのノワールアクション。原作のウェブトゥーンは主人公の年齢がもっと若い設定のようだが、仮想キャスト1位は、この『ある会社員』のイメージがあったからかもしれない。同作を久々に観返してみたが、今よりも線の細いソ・ジソプが、スピード感あふれるヒリヒリとしたアクションを繰り広げていた。
それに比べると、本作でのアクションは、何というのか、重量感が印象的だ。特に序盤は、まるで『犯罪都市』シリーズのマ・ドンソクのよう。ワンパンチで相手をぶちかましていく姿に圧倒される。スピード感よりも、重量感をもたらすアクションは、今の年齢のソ・ジソプを輝かせる要因のひとつにもなっていた。
本作は、韓国ドラマではお馴染みのいわゆる“復讐心”によって物語が進んでいく。ソ・ジソプが演じるのは、11年前にあることの責任を取り、自身でアキレス腱を切って裏社会から離れた主人公のギジュンだ。
劇中では、たった1人の弟が殺されたことを発端に、かつて所属していた組織との孤独な闘いを強いられることになるのだが、悲運なアウトサイダー役を演じさせたら右に出る者がいないソ・ジソプに、あまりにぴったりな役である。
そんなギジュンの悲壮感が滲み出ているのが、ソ・ジソプの唯一無二のあの眼差しである。
偶然にもソ・ジソプの21年前の出世作『バリでの出来事』と『ごめん、愛してる』をつい最近観直す機会があったが、今も昔も眼差しは変わっていない。ソ・ジソプはセリフではなく、眼差しで虚しさを語る。これほど眼差しで語れる韓国俳優はほかにいるだろうか。
しかも、これは過去作を近々に観ていたことも大きいが、年齢を重ねて主演俳優としての風格が増していたことも目を引いた。波に乗っている韓国俳優が数多く出演しているので、見劣りしてしまうのではないかと勝手に心配していたが杞憂だった。
もちろんチュ・ヨンウやコンミョンといった若手俳優、イ・ジュニョクやチャ・スンウォンといった特別出演俳優の熱演もドラマを盛り上げるが、少々説明の足りないノワールに韓国的情緒を加えていたのは間違いなくソ・ジソプだろう。