テンプルステイのハイライトは、奉仕活動という名の「図画工作」だ。ヨンジュたちが取り組んでいたような数珠づくり、ランタンづくりの二つから好きなほうを選ぶ。筆者は数珠づくりを選んだ。穴の開いた玉にひたすらヒモを通すなんて退屈だなどと思いながら始めたのに、すっかりのめりこんでしまった。こうした単純作業が心を安らかにするということを久しぶりに実感した。

普賢寺での数珠づくり体験。百八つの玉にヒモを通すだけの単調な作業だが、大きなリラックス効果が得られる

 工作の後は、住職を囲んでの茶会が催された。難しい話はない。世間話のようなものである。時計の針は夜の8時を回ったところ。いつもならビールやソジュをあおっている時間に、韓国茶を飲みながら他愛のない話をする。これがなかなか楽しい。中国からの参加者がカバンから鉄観音茶を出してきて、飲みましょうという。図らずも韓中お茶合戦となった。

 済州でのテンプルステイのとき、筆者はこっそり酒瓶を仕込んでいた。いい年をした男が夜9時にしらふで眠れるものかと思っていたのだ。普賢寺のときは山で飲むのにふさわしい野イチゴ酒を買ってあったのだが、読経→数珠づくり→和やかなお茶会ですっかり心が安らかになり、開栓せず日本に持ち帰った。

 翌朝は6時に起床。朝食をいただいてから僧侶とともに裏山を散歩した。紅葉を愛で、落ち葉を踏みながら歩く。朝はほぼ二日酔いの筆者にとっては、珍しく清々しい時間だった。

 次の機会にはスマホを寺に預けて2~3泊はしたいと思いながら、いまだに実現できていない。ふだんの自堕落な生活に清廉な余白を設けるようなテンプルステイ。中高年の韓国リピーターにはぜひ体験してもらいたい。なによりテンプルステイ明けのビール(いわば精進落とし)が最高である。

早朝、僧侶の案内で普賢寺周辺の山道を歩くテンプルステイの参加者たち

●配信情報

Netflixシリーズ『隠し味にはロマンス』独占配信中

[2025年/全10話]演出:パク・ダンヒ『弱いヒーロー Class1』(共同演出) 脚本:チョン・スユン『少年飛行』 クリエイター:ハン・ジュンヒ『D.P. -脱走兵追跡官-』シリーズ(演出・脚本)、『弱いヒーロー』シリーズ(クリエイター)

出演:カン・ハヌル『椿の花咲く頃』、コ・ミンシ『誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる』『五月の青春』、キム・シンロク『地獄が呼んでいる』シリーズ、ユ・スビン『愛の不時着』『弱いヒーロー Class2』、ペ・ナラ『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン2、ホン・ファヨン埋もれた心』、ペ・ユラム、オ・ミネ