キム・テリの演技力については、『二十五、二十一』でも十分に感嘆させられていた。稀有な女優であることは間違いない。それでも、『ジョンニョン:スター誕生』には改めて驚嘆させられた。今度は演技だけでなく歌唱の場面でも、その天才性を存分に発揮してくれた。もしまだ『ジョンニョン:スター誕生』を見ていない人がいたら、熱意を込めて「超推し」したい気持ちだ。(以下、一部ネタバレを含みます)
■天才女優キム・テリが躍動する「超推し」作!『ジョンニョン:スター誕生』
1950 年代の港町・木浦(モッポ)。『ジョンニョン:スター誕生』でキム・テリが魂を込めて演じる主人公ジョンニョンは、潮風が吹き込む町で魚を売りながら生きる少女だ。貧しくても性格は真っ直ぐだった。
ジョンニョンは、生まれながらにして神から授けられたような澄み渡る歌声を持っていた。しかし、母(ムン・ソリ)はなぜか、その才能を人前で輝かせることを決して許さなかった。ほんの少しでも歌えば、極端に怒られて納屋に閉じ込められる始末だった。

運命は静かに扉を開いた。木浦に巡業で来ていた国劇スターのムン・オッキョン(チョン・ウンチェ)が、偶然にもジョンニョンの才能を見抜いた。
スターの一言は、ジョンニョンの心に火を灯した。姉の温かな後押しを受け、ジョンニョンはソウル行きを決意。家を飛び出し、「梅蘭(メラン)国劇団」のオーディションへと向かった。
魚の臭いが消えない田舎娘は、都会の受験生たちに嘲笑される。それでも、本番のオーディションのときに、彼女の歌声は他の受験生とはまったく違った。団長(ラ・ミラン)は、その声にかつての天才歌手の面影を見出し、胸を打たれた。
パンソリの実力を評価されて、ジョンニョンはかろうじて補欠合格となった。彼女は逆風を追い風に変えながら、華やかな舞台の頂点を目指していく。
しかし、娘が「梅蘭国劇団」の研究生になったことを知った母は、強引に娘を劇団から引き離そうとする。そのときに、ジョンニョンの母は団長を見かける。瞬間的に2人は凍り付く……そうなのだ。団長がジョンニョンの歌唱を聴いて思い出した「かつての天才歌手」とは、ジョンニョンの母だったのである。
なぜ、ジョンニョンの母は歌をやめなければならなかったのか。天才的な歌声を引き継いだジョンニョンは、どのような歌唱人生を歩むのか――。