――もう少し詳しく説明していただけますか。

「俳優と演技が一体になっていると感じました。ですから私は、本当の達人の演技を最初の観客として見物するという特別な経験をしました。ただ、驚くべきことに、ナ・ムニさんたちは、勝手に即興演技を披露するわけでなく、ほとんどのシーンは脚本の通りに演じます。そのなかで優れた自然さを見せてくれました。

 私が演出者として神経を遣ったことといえば、最大限に自然な演技ができるようにコンディションを調節することでした。みなさんの演技の邪魔をしないように、映画的な技巧もできる限り使いませんでした」

――韓国では多くの観客に愛された作品ですが、観客の方々の反応の中で記憶に残っているものはありますか。

「こんな評価を書き込んでくれた方がいました。『結婚してから初めて、母とふたりきりで映画を見ました。私も誰かの娘であり、母であり、いつかは祖母となり、死を迎えるでしょう。それなのに“お母さん、ありがとう。愛しています“という言葉を今まで言えずに生きてきました。でも、この映画を一緒に見て、家に帰ってひとしきり泣いた後に改めて母に電話をかけ、ようやく“お母さんありがとう”と言えました。映画を見て勇気を出すことができました』

 この感想を読み、映画がそんな役割を果たすことができたのかと、とてもありがたかったです」

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●キム・ヨンギュン監督プロフィール

 1969年生まれ。数々の短編映画で評価された後、『ワニ&ジュナ〜揺れる想い〜』(2001年)で長編デビュー。その後もホラー『赤い靴』(2005年)、ロマンチックな時代劇『炎のように蝶のように』(2009年)、ウェブ漫画に込められた呪いを読み解く『殺人漫画』(2013年)と、多彩なジャンルの作品を手掛けている。

●『最後のピクニック』あらすじ

 事業に失敗した息子ヘウン(リュ・スンス)から助けてほしいと泣きつかれ、言葉を失うウンシム(ナ・ムニ)。友人で姻戚関係にもあるグムスン(キム・ヨンオク)が訪ねてきたのをきっかけに、長年、足を向けることのなかった故郷に戻る。かつて自分に思いを寄せていたテホ(パク・クニョン)とも再会し、心穏やかな時間を過ごしていたウンシムだったが、自分と同様グムスンも体の不調を抱えていることに気づく。

●劇場公開データ

9月12日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国ロードショー

配給:ショウゲート

公式サイト:https://picnic-movie.jp/

[2024年/韓国/114分]監督:キム・ヨンギュン『ワニ&ジュナ〜揺れる想い〜』

出演:ナ・ムニ『おつかれさま』『ナビレラ-それでも蝶は舞う-』、『怪しい彼女』(映画)、キム・ヨンオク『Pachinko パチンコ』『キング・ザ・ランド』『悪魔なカノジョは裁判官』、パク・クニョン『追跡者〔チェイサー〕』『花よりおじいさん

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