■2000年代初頭、韓流エンタメの萌芽

 その頃、ウンジュンが母と住んでいた家を出てサンヨンと二人暮しするための資金稼ぎに、手持ちの本やCDを古書店に売りに出すシーンが4話にあった。

 ちらっと見えたCDジャケットは日本でも人気のあるBoAのセカンドアルバム『No.1』だ。彼女は韓流のハの字もなかった2001年、日本デビューし、2002年にデビューアルバム「LIESTN TO MY HEART」がオリコンチャート初登場1位を記録していた。その当時は無国籍感の強い売り出し方だったが、彼女こそK-POPの元祖と言えるだろう。

 2000年にはハン・ソッキュチェ・ミンシク主演映画『シュリ』が、2001年にはソン・ガンホイ・ビョンホン主演映画『JSA』が日本公開され、大きな話題となった。

 のちの韓流エンタメの萌芽があったとはいえ、当時の韓国文化やソウルの街の西洋的な洗練具合は日本とは比べようもないほど低く、あか抜けしていなかった。

 6話には光化門路の教保文庫前でばった会ったサンヨンとサンハクが鐘閣(チョンガッ)まで歩こうと言いながら、夜の鐘路3街(チョンノサムガ)辺りを延々と歩くシーンがあった。

 この20年余り後には益善洞や西スンラギルを中心に外国人観光客の人気を得る鐘路3街だが、2002年頃は、お金はないが時間はある中高年の憩いの場に過ぎなかった。サンヨンと親友ウンジュンの彼氏サンハクの距離は、この長い散歩で一気に縮まり、物語を展開させることになる。

ソウルの仁寺洞から鐘閣方向を望む(2000年撮影)
劇中でサンヨンとサンハクが別れかけたが、さらに散歩を続けることになった楽園商街の北側、現在の様子(2024年撮影)

●配信情報

Netflixシリーズ『ウンジュンとサンヨン』独占配信中

[2025年/全15話]演出:チョ・ヨンミン『ブラームスは好きですか?』『愛と、利と』 脚本:ソン・ヘジン『空から降る一億の星』『マイ・スイート・ソウル』

出演:キム・ゴウン『ユミの細胞たち』シリーズ『トッケビ〜君がくれた愛しい日々』、パク・ジヒョン『財閥X刑事』『ユミの細胞たち』、キム・ゴヌ『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』、キム・ジェウォンオク氏夫人伝-偽りの身分 真実の人生-』