■日本側参加者「先生たちは胸にグサリと刺さるほど厳しく、時には優しくストレートに指摘」
7月25日から8月3日までの計10日間にわたる濃密なレッスン。連日35度を超えるような酷暑の中、52人の受講生はEXOチーム、LE SSERAFIMチーム、IVEチーム、ZEROBASEONEチーム、MEOVVチーム、iznaチームに分かれて練習を開始。講師陣の熱心な指導を受けながらそれぞれの持ち歌をブラッシュアップし、パフォーマンスの向上に大粒の汗を流した。
今回のサマーキャンプについて受講生に感想をたずねたところ、こんな答えが返ってきた。
「ヴォーカルやダンスの先生たちは、ぼくたちが気付かないような細かい問題点や改善点を胸にグサリと刺さるほど厳しく、時には優しくストレートに指摘してくれます。先生の歌声に合わせてぼくたちが何度も歌うことも。そこが日本との大きな違いだと思いました」(東京からの男子受講生)
実際にレッスンに密着取材するとそれがよく分かる。
例えば電子ピアノを弾くヴォーカルの男性講師は高音の発声に苦労している女子生徒に対し、「自分の声がずっと向こうの方まで飛んでいくイメージを持って!」「息をずっーと吐き続ける練習をしてください」と、身を乗り出し口から音符が飛び出していくような身振り手振りで何度も指導。
ダンス講師は生徒の集団群舞を真剣に見つめ、「腕や肩の角度、アップダウンがそろっていないのはなぜ?」「ダンスが音(楽曲)と合っていない!」「視線が泳いでいる」などと改善点を鋭く見抜いていた。
ダンスの練習中、講師から「せっかくいい才能を持っているのにそれを発揮できないのはもったいないよ」と指摘された女子生徒が悔しくて涙をこぼす場面も。また、歌とダンスがかみ合っていないグループには「韓国語の歌詞をよく理解していないから動作とリズムがバラバラになっている」「自信がないから中途半端に見えてしまう。もっと前向きな気持ちになってパフォーマンスを見せてほしい」という注文も容赦なかった。
一方、生徒たちは歌唱とダンスのレッスンのほかに、本物のアイドルになったかのようなメイクアップやAI技術を駆使した写真撮影も体験。12歳の男子生徒を担当したプロのメイクアップアーティストは、「顔の表情を立体的に見せるためには顔の中心部を白く、輪郭を暗くするようなメイクを施します」。メイク中、日々の練習の疲れで眠りに落ちてしまった男子生徒は、先生の合図で目覚めると、鏡に映った自分を見て「すごくカッコよくなりました」と満足気だった。
■自分の魅力をさらに高めるための努力、自分に合った髪型やメイクが重要
今回のキャンプで特に印象に残ったことが2点ある。1つ目は現役アイドルとしてワークショップに駆け付けた、韓国初のジェンダーレスコンセプトを持つボーイズグループ・XLOV(エックスラブ)の思いやりにあふれた“直伝”だ。
同グループは今年1月7日にデビューした4人組で、グループ名には未知数や否定の意味を持つ「X」と、未完成の愛を意味する「LOV」を取り入れた。メンバーは中国、台湾、韓国、日本という多国籍で構成されておりグローバルな活躍が期待されている。
受講生のグループパフォーマンスを真剣な表情で見つめていたXLOVメンバーは、「ダンスや歌のうまさだけではアイドルになれない。自分だけの特別な魅力があってこそなれるものです。アイドルを目指すなら自分自身をしっかり把握しないといけません」。
さらにK-POPアイドルのビジュアルに関しては、「生まれもった自分の容姿を尊敬するのは当然ですが、自分の魅力をさらに高めるための努力を探していくべき。だからこそ自分に合った髪型やメイクが重要なのです。日焼け止めだけではダメ。メイクも実力です」などと“アイドル哲学”を指摘すると、受講生たちは大きくうなずいていた。
質疑応答の時間では、女子生徒が「私は身長が低く成長期も終わってしまいました。デビューできるでしょうか?」とおそるおそる質問。これにメンバーは「だから何? 他のことを考えたほうがいい。あなたはそのままで十分“カワイイ”です」と笑顔を見せた。
2番目は先生(講師)と生徒(受講生)の関係性だ。当初は生徒の個性に合わせて各先生が歌の選曲やヘア、メイクの仕上がりを決めているのかと思ったが、女子生徒に聞くと「まずは私たちが憧れているグループの楽曲やスターの髪型、メイクを選んで先生に提示することから始まります。先生の方から一方的に指示が来るわけではありません」とのこと。
先生から生徒へ、という垂直的な命令体系ではなく、生徒の自主性や自由な選択を重んじ、その後に先生たちが生徒の背中を押しながら成長をサポートするといった仲間意識がベースにあるように感じた。