韓国ドラマにおいて男装の麗人というモチーフは、まさに王道のカードと言える。女性が男性のふりをして社会に潜り込むという設定は、禁断のときめきに満ちている。しかし、『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』は、その定石を180度ひっくり返してみせた。屈強な青年が寡婦になるというのは、痛快な逆転の発想だった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■笑わせて緊張させる時代劇『ノクドゥ伝』、相反する要素が見事なバランスで共存

 本作主演のチャン・ドンユンが見せる変身ぶりは、単なる女装を超えるほど衝撃的だった。涼やかな目元を持つ彼が派手なチョゴリをまとった瞬間、息をのむような美しさが立ち現れていた。

 物語の幕開けは、牧歌的でありながらも不穏な空気をはらんでいた。離島で家族と穏やかに暮らしていた主人公ノクドゥの日常は、突如現れた謎の刺客集団によって粉々に打ち砕かれる。なぜ自分たちが狙われるのか。その理不尽な暴力の根源を突き止めるべく、ノクドゥは逃げる刺客を追跡する。

 たどり着いた先は、世俗から隔絶された「寡婦村」であった。そこは、夫を亡くした女性たちだけが身を寄せる男子禁制の聖域。男として足を踏み入れることが許されないので、ノクドゥはやむを得ず、女性として生きる道を選ぶ。

 この奇想天外な設定が、傑作コメディを生み出す下地になった。秀逸なのが、キム・ソヒョンが演じる妓生(キセン)見習いのドンジュとの奇妙な同居生活だ。

 男であることを隠し通さねばならないノクドゥと、彼を少し変わった「お姉さん」だと思い込んでいるドンジュ。狭い部屋で繰り広げられる2人のやり取りは、質の高いコントを見ているかのような軽快さがあった。

 さらに、女性たちから洗礼を受けるノクドゥの姿が、気持ちよく笑わせてくれる。川での沐浴や無防備な着替えのシーンでは、ノクドゥも正体がバレることを恐れて地獄のような責め苦を味わう。周囲の女性たちが普通に行動する中で、ノクドゥは奇声をあげて逃げ惑ったりする。

 なんとも滑稽でありながらもどこか愛おしい。チャン・ドンユンが本来持っている男性的な身体能力と、役柄としての女性的な振る舞いとのギャップが、笑いのボルテージをどんどん高めてくれる。

『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』Licensed by KBS Media Ltd. (C) 2019 KBS. All rights reserved