Netflixイルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』は、チョン・ドヨンチョン・ギョンホという主演2人の放つ存在感が圧倒的だ。特に、長年にわたり映画界のミューズとして君臨してきたチョン・ドヨンが、本作では重厚なイメージを脱ぎ捨て、コミカルかつ軽快なキャラクターへと変貌を遂げている点が秀逸だった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■コメディ、サスペンス、ラブロマンスが見事に融合した『イルタ・スキャンダル』

 チョン・ドヨンが演じる主人公ナム・ヘンソンは、かつてハンドボールの韓国代表として活躍した経歴を持っていた。しかし、彼女の人生は順風満帆ではなかった。母親の突然の訃報を受け、彼女はアスリートとしての輝かしい未来を断念し、幼い姪を育てる道を選ばざるを得なかった。

 ハンドボールを置き、代わりに手にしたのは惣菜店の調理器具だった。彼女は「国家代表惣菜店」のオーナーとして、自立が難しい弟ナム・ジェウ(オ・ウィシク)と姪のナム・ヘイ(ノ・ユンソ)を養うため、懸命に働き続けてきた。

 物語が大きく動き出すきっかけは、弟の急病で駆けつけた病院での出来事だ。そこでヘンソンは挙動不審な男と遭遇し、トラブルへと発展する。

 韓国ドラマにおいて、激しい追走劇は一種のお家芸とも言える定番の演出だが、本作の序盤で描かれるチェイス場面は一味違う。逃走を図る男に対し、ヘンソンは元国家代表としての身体能力をフル稼働させて追い詰めていくのだ。そのスピード感は、単なるコメディの枠を超えるほど見応えがあった。

 彼女が執念で追いかけたその男こそ、学習塾業界のスター講師、チェ・チヨルであった。この複雑な内面を持つキャラクターを、チョン・ギョンホが全身で演じきっている。

 チヨルは数学講師としてトップの座に君臨し、富と名声を手に入れていた。しかし、その代償として深刻な睡眠障害と摂食障害に悩まされていた。

 心身ともに疲れきっていた彼に小さな奇跡が訪れる。偶然口にした「国家代表惣菜店」の弁当だけは、拒否反応を起こさずに完食できたのだ。その料理には、彼の奥底に眠る記憶を呼び覚ます、忘れがたい風味があった。

 ところが、運命は皮肉な糸を紡ぐ。自身の生命線とも言える食事を提供する店の主人は、あろうことか病院でのトラブル相手であるヘンソンだったのだ。

Netflixシリーズ『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』独占配信中