Netflix配信『ナビレラ-それでも蝶は舞う-』は、世代を問わずあらゆる人々の胸に深く刺さる根源的な命題を提示している。それは「大好きなことに夢中になる」ということ。実際、ドラマでは「心底愛するものに全霊を捧げる」という純粋な生き様が描かれている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■何度も見たい珠玉作『ナビレラ』、年齢という壁を越えて夢を追う2人の姿はこの上ない好感が満ちていた
パク・イナンが演じる70歳の主人公シム・ドクチュルは、郵便局員としての実直な労働人生に幕を下ろし、穏やかで何不自由ない晩年を過ごしていた。しかし、彼の内面には常に、言葉にできない渇望感が渦巻いていた。その正体は、かつての自分が置き忘れてしまった、生涯を懸けて成し遂げるべき宿願の存在だった。
ドクチュルの脳裏には、幼き日に偶然目にしたバレエの優美な光景が、色褪せることなく焼き付いていた。だが、家族を養うという重責に追われる日々の中で、輝かしい憧憬は心の奥底に封印されたままだった。
70代を迎えた彼は、長きにわたる沈黙を破り、再び自身の内なる炎を燃え上がらせる重大な決断を下す。老境に差し掛かった男性が過酷な肉体表現であるバレエに挑むという突飛な宣言を、周囲の人間がまともに受け止めるはずもなかった。
しかし、嘲笑にも決して屈することなく、ドクチュルは未踏の芸術世界へと足を踏み入れようとする。そんな彼が教えを乞うことになったのが、ソン・ガン演じる23歳の青年イ・チェロクである。
彼は、高校を卒業してからバレエの道を志したという、業界では極めて異例の遅咲きであった。それでも、圧倒的な身体能力と表現力を持ち合わせていた。その一方で、彼の現実は過酷だった。日々の生活費を稼ぐためのアルバイトに忙殺され、さらに複雑な家庭環境や私生活のトラブルが重くのしかかり、バレエへの集中力を著しく削がれていた。
予期せぬ不可抗力と複雑な事情が絡み合い、チェロクは風変わりな老人の指導役を引き受けざるを得ない羽目になる。当初のチェロクは、身体機能が衰えた高齢者にバレエなど到底不可能だという、強固な先入観に支配されていた。それゆえ、彼の指導態度は冷淡で、熱意が見られなかった。
世代も価値観もまるで異なる2人は、稽古場で幾度となく激しい衝突を繰り返す。しかし、己の限界に挑み続けるドクチュルの真摯な姿に触れるうち、チェロクの心境に変化が訪れる。いつしか反発は共鳴へと変わり、老いた弟子と若き師匠の間には、言葉を超えた深い精神的な繋がりが芽生えていく。