大ヒット映画『新感染ファイナル・エクスプレス』の原題は『釜山行』だ。コン・ユやマ・ドンソク、チョン・ユミらが乗客に扮した高速鉄道は釜山には到達しないが、このタイトルにはゾンビ化した人間たちと朝鮮戦争のときに南侵した共産主義者たちを重ね、現実に釜山に避難した人たちを想起させる。

 チャン・リュル監督の作品で、パク・ヘイル&シン・ミナ主演映画『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』(原題=慶州)は、駐在先の中国から慶州に来た主人公(パク・ヘイル)が大小の古墳と庶民の住宅街が混在する街で不思議な体験をする話だ。神秘性のある慶州という地名が物語と直結している。

 同監督の映画『群山』(パク・ヘイル&ムン・ソリ主演)も、日本語を話すミステリアスな登場人物群(パク・ソダムチョン・ジニョンムン・スク)と、植民地時代に日本人が多く住んだ群山(全羅北道)という街が符合する。

 だが、前でも触れたように、コンプライアンスの観点から、今後はよほど肯定的なニュアンスでの使用でない限り、実在する地名はタイトルにも設定にも採用されなくなりそうだ。

 地名だけではない。韓国ではある時期まで現代史上の人物名がそのまま使われることが多かった。その最たる例が1980年代の政争を描き、朴正煕大統領や全斗煥大統領が実名で登場するドラマ『第五共和国』だ。

 しかし、その後は、チョ・ヨンジンが朴正煕に扮した映画『大統領の理髪師』でも、チャン・グァンが全斗煥に扮した映画『26年』でも、イ・ソンミンが朴正煕に扮した映画『KCIA 南山の部長たち』でも、ファン・ジョンミンが全斗煥大統領に扮した映画『ソウルの春』でも、架空の人名か「閣下」という呼称で、大統領の名前がぼかされるようになっている。