人気ドラマ『瑞草洞<ソチョドン>』(U-NEXTで独占配信中)は、ソウルの法曹界で活躍する主人公(イ・ジョンソク)をはじめとする弁護士たちの物語で、現役の弁護士が脚本を書いたことでも話題となっている。
このドラマのタイトルには「洞」が付いているので、地名であることは日本人にも想像がつく。韓国のドラマや映画でタイトルに実在する地名が付く作品は珍しくない。その意図について考えてみよう。
■イ・ジョンソク主演『瑞草洞』の舞台、江南の瑞草洞は法曹の街
瑞草洞は、韓国旅行リピーターなら漢江の南側の地名であることまでわかるかもしれない。韓国のミュージカルファンなら「芸術の殿堂(イェスレジョンダン)」という公演会場がある場所としておなじみだろう。
あるいは、日本のテレビ番組『突撃!ストリートシェフ』や『Youは何しに日本へ?』で取り上げられた北郷民(脱北者)が経営する北朝鮮料理店『ソルヌン』がある街として記憶している人がいるかもしれない。しかし、旅行者には、明洞や弘大、聖水洞のように街のイメージまで浮かぶかというと微妙である。
瑞草洞には、日本で言う最高裁判所や検察庁があるため、関連する役所や弁護士事務所などが集まっている。韓国人にとって、瑞草洞は法曹(法律に関わる仕事)の街である。『瑞草洞』はどんな物語なのか、タイトルが直接語っている例だ。
法曹の街であることを伝えるためにドラマのタイトルを「瑞草洞」にしても誰も傷つかない。しかし、最近のドラマや映画によく架空の都市(地名)が登場することからもわかるように、実在の地名を使う場合は神経をつかうようだ。
2023年に公開されたバラバラ殺人事件を題材とした映画『雉岳山(チアクサン)』(ユン・ギュンサン&キム・イェウォン主演)は、イメージを損なうという理由で原州市からクレームがついた。
■飲食と娯楽の街、梨泰院を舞台にした『梨泰院クラス』
タイトルに実在地名が冠されている作品で、日本でもっとも知られているのはパク・ソジュン主演の大ヒット作、Netflixドラマ『梨泰院クラス』だろう。
このドラマで、梨泰院は飲食業界で成功してやろうという若者の野望が渦巻く街として描かれている。2018年に米軍基地が地方に移転するまではアメリカ人が多かったので、梨泰院には西洋的に洗練されたおしゃれな飲食店が多い。
『梨泰院クラス』が日本に与えた影響でもっともわかりやすいのが、ソジュ(韓国焼酎)の普及だろう。日本のコンビニにはいまだにソジュが並んでいる。
■ソウルの地名や地方の地名が入った作品
地名がタイトルに入った最近の作品では、パク・ボヨン&GOT7ジニョン主演Netflixドラマ『未知のソウル』、ファン・ジョンミン主演『ソウルの春』、ユ・アイン主演『ソウル・バイブス』、マ・ドンソク主演『狎鴎亭(アックジョン)スターダム』、キム・ジウン&ロモン主演『ブランディングイン聖水洞(ソンスドン)』、パク・ウンビンが出演していた『江南ロマン・ストリート』、ムン・グニョン&パク・シフ主演『清潭洞<チョンダムドン>アリス』などが挙げられる。
民主化への期待を表す言葉をアイロニーとして使った『ソウルの春』以外は、若者が憧れる街の象徴として実在地名が使われている。
しかし、これが地方の実在地名となると一筋縄ではいかなくなる。
チョン・ジヒョン&チュ・ジフン主演のサスペンスドラマ『智異山<チリサン>~君へのシグナル~』は、智異山に霊山信仰があること、朝鮮戦争前後に共産ゲリラが潜伏していた場所というミステリアスなイメージがあることなどが、タイトルに冠された理由だろう。
パク・ジョンミン&キム・ゴウン主演映画『サンセット・イン・マイ・ホームタウン』(原題=辺山)は、主人公が捨てた故郷に対する複雑な感情が、僻地をイメージさせる原題に現れている。辺山は西の海に面した半島で、韓国本土なのに離島感のあるところだ。『サラ・キムという女』のシン・ヘソン主演『生まれ変わってもよろしく』や、ホン・サンス監督の映画『3人のアンヌ』の撮影地でもある。