韓国国内で大ヒット中の映画『王と生きる男』を現地で見た。2026年2月4日の公開以降、累計観客動員数が1600万人超と、韓国映画界の記録を塗り替える勢いだ。

 本作は貧しい村の復興のために流刑地の誘致に力を注ぐ村長と、王位から追放された先王との固い絆を描いた物語。村長に扮するのは、『タクシー運転手 約束は海を越えて』『1987、ある闘いの真実』での名演技が光るユ・ヘジン、王位をはく奪され、17歳で命を落とした「悲劇の幼王」イ・ホンウィ(朝鮮王朝第6代王・端宗)を演じるのは『弱いヒーロー』シリーズのパク・ジフンWanna One出身)である。(以下、一部ネタバレを含みます)

■大ヒット中の映画『王と生きる男』ユ・ヘジン、パク・ジフンの迫真迫る演技に釘付け

 江原道・寧越(ヨンウォル)のクァンチョン谷という山村に住む村長のオム・フンド(ユ・ヘジン)は、村民たちが貧困生活にあえぐ姿に胸を痛めていた。そんなある日、ウ・ジョンチュル村長(アン・ジェホン)率いるノンゴル村の村民たちが、流刑先として両班を村に迎え入れたたことで、都から豪華な食材や衣服が持ち込まれ、村の暮らしが豊かになったことを知る。

 寧越を訪れた王の重臣、ハン・ミョンフェ(ユ・ジテ)は、流刑地にふさわしい場所探しを郡守(パク・チファン)に命じる。その話を耳にしたオム・フンドは、三方を川に囲まれ、背後には虎の住む山が控えるクァンチョン谷こそ流刑地にふさわしいと豪語。視察の上、ミョンフィはこの地にホンウィを流刑することを決定する。

 大喜びするフンとクァンチョン谷の村民たちだったが、やってくるのは王位をはく奪されて流刑される先王のイ・ホンウィ(パク・ジフン)だと知り愕然とする。身の回りの世話をする女官メファ(チョン・ミド)に付き添われ、寧越を訪れたホンウィは、やせ衰え生気がない状態。食事にも一切手を付けないホンウィに、思惑が外れたフンドらはお手上げ状態だった。

しかし、ホンウィの体調を心配し、誠心誠意尽くす村人たちの態度に、ホンウィは少しずつ心を開き……。

映画『王と生きる男(原題)』韓国版ポスター (C)2026 SHOWBOX AND B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

 ハングルを創生した王として有名な朝鮮王朝第4代王・世宗の次男で、第5代王となった文宗が王に即位後わずか2年で他界したことで、12歳で第6代王となった端宗(タンジョン)。叔父である首陽大君(第7代・世祖)の策略により王位を奪われ、江原道(現・江原特別自治道)寧越の清涼浦に流刑され、わずか16歳で命を落とした「悲劇の王」として知られている。

『王と生きる男』では、この史実をベースに悲劇の幼王、イ・ホンウィと流刑地の管理人となるフンドの、身分を超えた者同士の温かい心の交流を中心に描かれている。

 フンドを演じるユ・ヘジンの太鼓持ちのようなふるまいは笑いを誘い、ホンウィの願いを叶える終盤に見せる切ない表情は涙を誘う。

 イ・ホンウィを演じた若手実力派パク・ジフンは、悲劇の王の苦しみと悲劇的な生涯をよりリアルに表現するために、2か月間の撮影中に1日1個のリンゴだけを食べて、15キロ減量したという。絶望し、まるで屍のようだったホンウィが、フンドをはじめとした村人たちのもてなしを受けるうちに、10代の少年らしい明るい表情を取り戻し、大きな瞳が輝きを放ち始める場面に救われる。

 史実では、生母は端宗を産んだ翌日に亡くなり、端宗は側室に育てられたという。そんなホンウィを最後まで見守りながら懸命に仕えるメファを演じたチョン・ミドが、歴史ドラマで新たな姿を見せてくれる。

 また、本作には首陽大君は登場せず、彼に仕えた策士のハン・ミョンフェと、その弟で端宗を復位させるために奔走する錦城大君(イ・ジョンヒョク/特別出演)の攻防が描かれている。

 監督・脚本は『リバウンド』のチャン・ハンジュン監督が務める。日本での公開が待たれる。