Netflix配信のヒューマンドラマ『誰だって無価値な自分と闘っている』は、映画監督を志す主人公ドンマン(ク・ギョファン)の個性的で、ときに過激な言動が目立つ。

 ドンマンはすべてにおいて厭世的になっているのだが、映画会社に勤めるウナ(コ・ユンジョン)の前で、「僕はこの世に好きな人はいないし、好きなものもない。ただし、食べ物は除く。食べ物を尊敬し、愛しています」と言っていたように、食べることには執着があるようだ。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『誰だって無価値な自分と闘っている』に登場したポークランチョンミートは庶民の活力の象徴

 本作3話には、ウナと意志疎通が図れたうれしさからか、ドンマンが自宅で楽しそうにポークランチョンミート(加工肉)を焼くシーンがあった。

 ポークランチョンミートは、韓国のスーパーやコンビニにかならず置いてある身近な食材だ。代表的な銘柄である米国ホーメルフーズ社の商品名がSPAМなので、韓国では「スパム」と呼ばれている。(以下、韓国語の名称にちなんで「スパム」と表記)

 スパムは缶入りが一般的。ドンマンが自宅で調理していたのは、スパムを缶詰からすくって、フライパンで焼いただけのスパムクイだ。もっとも簡単な肉料理と言ってもよいだろう。

 スパムは塩分が少なくないので、ごはんが進む。ソジュやビールのつまみにもいい。韓国の飲み屋でスパムクイを頼むと、たいてい玉子といっしょに焼いたものが出てくる。

 ドラマや映画におけるスパムの役割は活力の象徴だろうか。男子が好きなものというイメージもある。登場人物の気分が上がっているときに食べるものと言ってもいい。

 ドラマではチョン・ヘイン主演『ある春の夜に』、パク・ヘス主演『刑務所のルールブック』、キム・スヒョン主演『サイコだけど大丈夫』など。映画なら最近日本で公開された『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』で、登場人物がスパムを食べるシーンがあった。

韓国で売られているポークランチョンミート。米国ホーメルフーズ社の商品名「SPAМ」にちなんで、一般的にスパムと呼ばれている
玉子をからめて焼き、ケチャップをかけたスパムクイ
スパムクイと玉子焼きは庶民的な居酒屋によくあるメニュー