Netflix人気作『本日も完売しました』は、農村で良質なキノコを栽培している謎多き青年メチュリこと、マシュー・リー(アン・ヒョソプ)に、通販番組のカリスマМCイェジン(チェ・ウォンビン)が、ある目的のために近づく話だ。そこに化粧品会社の専務エリック(キム・ボム)が加わり、微妙な三角関係になるのが物語の軸なのだが、随所に挿入される農村の人情噺も魅力的だ。(以下、一部ネタバレを含みます)
■アン・ヒョソプ主演『本日も完売しました』で描かれる農村の情緒、バス運転手さんの心をほぐしたハルモニ
本作の第3話では、トクプン村のバス運転手に関するエピソードに心打たれた。
村民の足であるバスの運転手(アン・サンウ)はいつもイラついている。発着時間はいい加減。乗客に対しては常に「早く乗れ、早く降りろ」といった態度。あるときは乗客が着席する前に急発進してハルモニ(コ・ドゥシム)が転んでしまった。
それを見かねたメチュリが運転手に苦言を呈する。理詰めで説得するメチュリに対し、ふてくされながら応じる運転手。
後日、ハルモニが再びバスに乗る。バッグから何かを取り出そうとしてすぐに着席しない彼女に運転手は懲りもせず悪態をつく。
「朝ごはん抜きだろ? 大変だろう。これでも食べて」
ハルモニが運転手に渡したビニール袋には蒸したトウモロコシが二本。封筒代わりのカレンダーには5万ウォン札が数枚包んであった。メモ紙には「ミルク代にして」とある。
翌日、運転手は憑き物が取れたような顔をしている。バスを停めハルモニたちのいる客席に向かって立ち、深々と頭を下げて言う。
「今まで申しわけありませんでした。生活に追われて気持ちまで荒れていました。これからは時刻を守り、急発進などしないようにします。発車前にトイレに行きたい方は遠慮なく言ってください」
拍手で応じる乗客たち。ハルモニの笑顔が眩しい。農村の人情女将を演じさせたら右に出る者がいない大女優コ・ドゥシムの面目が躍如とした瞬間だ。
理詰めで説得したメチュリと情に訴えかけて心をほぐしたハルモニ。このキャラクター対比も鮮やかで清々しかった。