天才的な脚本家パク・ヘヨンが作り出したNetflixヒューマンドラマ『誰だって無価値な自分と闘っている』は、その世界観に大いに引き込まれる傑作だ。物語は大学の映画サークルの先輩後輩で結成された「8人会」のメンバーと、彼らに関わる人物を中心に描かれていく。「8人会」の拠点になっているのがレストランバー「アジト」だった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『誰だって無価値な自分と闘っている』は数々の感動と同時に宿題をたくさん残してくれた

 本作に登場する「アジト」は、映画と酒好きには楽園のような魅力的な酒場。個性的な客が集まる店の一角で自分が飲んでいると仮定して、このドラマを見て感じたことをアトランダムに書き出してみよう。

・映画を撮れない男は嫉妬で人生を自ら貶めていき、映画を撮れる男は悪評によって自分の道を見失っていく。その対比が象徴的に描かれていた。

・主人公ファン・ドンマンを演じたク・ギョファンをはじめ、出演陣の顔ぶれと演じた役の多彩さに感銘を受けている。よくぞこれほどの個性派俳優が集まったものだ、と心から感心している。

・ヒロインのピョン・ウナを演じたコ・ユンジョンの存在感が鮮烈だった。鬱屈した精神状態が常態化していたウナ。彼女の沈んだ雰囲気がドラマで随所に見られたが、決して暗くはなかった。むしろ、「芯の強さ」が出ていた。

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・個人的に気に入っていたキャラはパク・ギョンセ(オ・ジョンセ)とコ・ヘジンカン・マルグム)の夫婦である。最新作が大コケした映画監督のギョンセと彼の再起に奔走する映画会社社長のヘジン。2人はドラマのもう一組の「主役」だった。

・感性豊かな詩人であった主人公の兄、ファン・ジンマン(パク・ヘジュン)。彼が詩を書けなくなった背景が断片的に描かれたが、そういう情景を丹念に拾い集めた構成が見事だった。ジンマンの常套的な質問であった「人生の目的は?」ということを自分にも問いかけてみる。

・ヘジンが経営していた「アジト」。そこに集まってくる人々の喧騒と論争が痛快だった。「自分の人生にもこんな素敵な酒場があれば……」と思いながらドラマを見ていた。

・映画界の拝金主義にまみれたチェ・ドンヒョン(チェ・ウォニョン)。彼の語ることは全て俗っぽい。ドンヒョンは映画製作に純粋な情熱を傾けようとする人たちのアンチテーゼ。彼を露骨に出すことによって、「映画を作るにはどれほどの苦悩が伴うのか」ということが見えてきた。