■人気ゲームに登場した「奇妙な山」が実在?
2013年に発売されてから23年末までで、全世界で約1億9000万本を売り上げた「史上2番目に売れたビデオゲーム」(注1)として知られる『Grand Theft Auto V(グランド・セフト・オート・ファイブ)』。米・カリフォルニア州ロスアンゼルスをモデルにした架空の都市「ロスサントス」を舞台に、ありとあらゆる犯罪をやりまくれる(?)、オープンワールド・クライムアクションゲームだ。
注1/なお、史上最も売れたビデオゲームは『マインクラフト』とのこと。出典はこちら。List of best-selling video games - Wikipedia
その過激で自由すぎる内容、そして、けっこうな暴力描写もあることから、18歳未満禁止なのはもちろん、シリーズの一部作品は販売禁止の国があったり、『GTA V』に関してはお膝元のアメリカで販売禁止を求める議案が出たりしているのだとか。
そんな『GTA V』に、ある“奇妙な山”が登場することは一部ファンの間で有名だ。極彩色にペンキが塗られた小さな山なのだが、しかもこれ、実在するのだという。さらに、その山があるのは『GTA V』も真っ青の「法律の通用しない街」なのだ。
■アメリカで最も自由な「無法の街」?
その街があるのは、メキシコ国境が目と鼻の先、全米で最も熱い砂漠と言われる「ソノラ砂漠」(注2)の真っ只中。高層ビルが立ち並ぶロスアンゼルスの街から300km、車で約3時間ほどの距離にある、まさに砂漠の果てにある街だ。地元の人々が「アメリカで最後の自由な土地」と呼ぶその街の名は「Slab City(スラブ・シティ)」。
注2/正確には米・カリフォルニア州とアリゾナ州、メキシコのバハ・カリフォルニア州に跨る巨大な砂漠地帯。
“自由の国・アメリカ”(この名称もだいぶメッキが剥がれてきたが…)の人々が、そう呼ぶくらいだから、どれだけ自由でハチャメチャなのか想像できるだろう。
ただ、彼らアメリカ人の考える「自由」とは、私たち日本でのんびり暮らす人間の想像の斜め上を行くハードさだった。というのも、この街には水道も下水道も電気も郵便も病院もない。アメリカ政府には街として認知されていないため、税金を取られることはないが、あらゆる行政サービスは存在しない。
「City(都市、街)」と名はつくものの、政府や自治体も見て見ぬふりをしているので、法律も警察もない。言ってしまえば、西部開拓時代の「無法の街」のようなもの。しかも、住人そのものも「過ごしやすい冬の時期は4000人ぐらい。酷暑の夏には150人ぐらい」と安定しない(注3)。人口や住民の顔ぶれすらあやふやと、砂漠の蜃気楼のような「幻の街」なのだ。
注3/「コロナ・パンデミックの恐怖は砂漠の自給自足の街・スラブ・シティにまで」ワシントンポスト2020年6月8日記事(Fear of the pandemic reaches California’s Slab City, an off-the-grid desert community - The Washington Post)
いったいぜんたい、なぜこんな「幻の街」がこの地に誕生したのだろうか?