■名物あぶり餅に誘われつつも…
今宮神社に行くには、バスを利用したほうがいい。最寄り駅は京都市営地下鉄の北大路駅だが、歩いて20分もかかる。JRの京都駅や阪急の烏丸駅、京阪電車の出町柳駅などから市バスに乗り、今宮神社前か船岡山停留所で下車するのが便利。ただ、昨今のオーバーツーリズムの影響もあって、京都のバスの混雑はハンパないのでご注意を。
境内南側の入り口は、目に鮮やかな朱色が印象的な楼門。造営は比較的新しく、1926(大正15/昭和元)年に建てられている。この楼門をくぐってすぐ右手にあるのが、手水鉢も兼ねているお玉の井。1694(元禄7)年に桂昌院が寄進したものだ。
さらに右奥にあるのが末社の宗像社。こちらも同じ年に桂昌院が建立している。境内のほぼ中央に拝殿があり、北端には南面している本社と疫社という配置になる。なお、宗像社の脇を抜けた先、東門の向こうからは「今宮神社といえばこれ」という名物あぶり餅のいい匂いが漂ってくるが、まずはお参り。楽しみはあとにとっておこう。
■多くの摂末社と多彩なご利益
今宮神社の特徴は、境内に多くの摂社・末社が鎮座していることにある。宗像社のほかに、栲幡千千姫命(たくはたちぢひめのみこと)を祀る織姫社、伊弉那美(いざなみ)神と歴代斎王の御霊、810(大同5/弘仁元)年の「薬子(くすこ)の変」で倒れた藤原薬子・仲成兄妹らの御霊を祀る若宮社など、楼門から本社に向かうまでに数々の社がある。
さらに、大国社、蛭子社、八幡社、熱田社、住吉社、香取社、鏡作社、諏訪社の神を一棟の社に祀る八社に、稲荷社、月読社、大将軍社などなど、一度では回り切れないほどの社が集まっている。
しかも、それぞれの神様でご利益も異なり、たとえば織姫社の栲幡千千姫命は織物の神であるため、芸事や技術の上達にご利益があるとされ、若宮社は子宝・安産の神とされている。
ちなみに、本社3柱の1柱である奇稲田姫命も、八岐大蛇(やまたのおろち)の生贄(いけにえ)にされるところを素盞嗚尊に助けられて妻になっている。素盞嗚尊は天照大神の弟で三貴神の1柱。かなりの乱暴者であったにせよ、奇稲田姫命は玉の輿に乗ったといえなくもないので、ご利益は期待できる。
■紫式部に縁のある紫野
摂社・末社以外の見どころとしては、「阿呆賢(あほかし)さん」と呼ばれる石がある。古くから「神占石(かみうらいし)」ともいわれ、この石に心を込めて病気平癒を祈り、軽くなでてから体の悪いところをすれば回復するとされる。
また、神占石は「重軽石(おもかるいし)」ともいわれ、手の平で3度軽く石を打ってから持ち上げ、いったんおろしてからもう一度願い事を込めて持ち上げる。そのときに軽く感じることができれば、願いが成就すると伝えられている。
なお、疫神が祀られていた船岡山には、1870(明治2)年から織田信長を祀る建勲(たけいさお)神社が鎮座。今宮神社が鎮座する紫野は紫式部に縁のある場所で、式部が生まれ、晩年を過ごしたという雲林院や産湯に使った井戸が現存する大覚寺塔頭の真珠庵(特別公開時以外非公開)があり、式部の墓所も近い。
神社の参拝ののち、立ち寄ってみるのもおすすめだ。