どんなに治安が良いと言われる国でも、海外旅行をするときは危機感を持って行動するべきだ。たとえ、現地で出会ったのが同じ日本人だったとしても……。
今回も、タイ出張中のカワノアユミが現地で耳にした、ある不可解で恐ろしい話をご紹介しよう。
■念願のタイ旅行で出会ったのは
旅行好きの日本人女性・R子さんは、長年の夢だったタイ旅行で、バンコクを訪れていた。SNSで人気の映えるスポットを巡ったり、ローカルなタイフードを楽しむことが目的で、順調に旅を満喫していた。
滞在3日目、R子さんはSNSで知り合った日本人女性・Kと会う約束をしていた。Kはタイで長く働いており、現地の穴場スポットをたくさん知っているという。旅行客ではたどり着けない特別な場所を案内してくれると話していた。
その日の午後、R子さんの宿泊先のホテルのロビーで待ち合わせた2人は、すぐに打ち解けた。Kはとても気さくで、案内してくれるスポットはどれもR子さんの想像を超えるSNS映えする場所ばかりだった。
■Kの案内した隠れ家バーで…
そして夜になり、Kが最後に連れていってくれたのは、「地元の人しか知らない」という隠れ家バーだった。暗い路地裏にひっそりとたたずむそのバーは、バンコクの中心地にもかかわらず観光客の姿はほとんどなく、異国情緒漂う店だった。
「他の日本人のSNSでも見たことないでしょ? この店、特別なのよ」
確かに、R子さんが調べた限りでは、どのSNSにもこのバーの写真は載っていなかった。R子さんは胸を躍らせながら、店内の写真を撮りまくった。
その時、Kが微笑みながら言った。
「もっとSNS映えするカクテルがあるのよ。ちょっと待ってて」
Kはカウンターに向かい、バーテンダーに話をしていた。しばらくして戻ってきたKが手にしていたのは、目が覚めるような美しい青いカクテルだった。
「すごい……こんなカクテル初めて見たかも」
R子さんは写真を撮り、その後ゆっくりと一口飲んだ。甘く爽やかな味わいだった。Kと笑い合いながら飲み進めたR子さんだが、次第にぼんやりとした眠気を感じ始める。そして、そこで記憶は途切れた──。