■なんで私のアカウントに写真が?
目を覚ますと、R子さんはホテルのベッドの上にいた。昨夜の記憶は曖昧(あいまい)だったが、体に違和感はなかった。しかし、ベッド脇に置かれたスマートフォンを何気なく手に取り、彼女は驚愕した。
自分のSNSアカウントに、身に覚えのない自分の写真が投稿されていたのだ。
その写真には、ホテル周辺はもちろん、行った記憶のない寺院や市場で撮ったものまで含まれていた。どの写真も鮮明で確かに自分が写っている。しかも投稿には、
〈タイ、すごく楽しい! これからもっと観光するのが楽しみ!〉
こんなコメントが添えられていた。その文章を目にして、R子さんは血の気が引くのを感じた。
「これ……私が撮った写真じゃない……」
■フロントで衝撃的な事実が発覚
昨夜まで一緒だったはずのKに電話するが、何度コールしてもつながらない。取り乱したR子さんは、ホテルのフロントに相談し、昨夜の監視カメラ映像を確認させてもらった。映像にはKと待ち合わせし、笑顔で会話をするR子さんの姿が映っていた。
しかし、その後、Kと一緒にホテルを出ていく映像はあったが、深夜、彼女が戻ってきた姿はどこにも記録されていなかった。
さらに不可解だったのは、ホテルスタッフの一言だった。
「おかしいですね。あなた、明け方にチェックアウトされましたよね?」
「え?」と呆気にとられるR子さんに、フロントスタッフは、
「お客様は明け方チェックアウトされ、パスポートもその時お渡ししましたよ」
さらに驚くようなことを言った。もちろん、R子さんにそんな記憶はまったくない。あまりの不可解な事態にクラクラしながら自分のバッグを確認すると、本当にパスポートがなかった。
代わりにバッグの中に入っていたのは、タイ人女性の名前が記載された見知らぬIDカードだった。しかも、そのIDカードには、R子さんとそっくりな見知らぬ女性の写真が貼られていた──。
■R子は人生をすり替えられた?
大使館に駆け込み、なんとか帰国できたR子さんだったが、不気味なことに、その後も彼女のアカウントには写真が投稿され続けている。しかも、そこに写っているのは、R子さんの顔をした「誰か」だ。
彼女は誰か別の人生にすり替えられてしまったのだろうか……? それとも、Kという女性にパスポートを盗まれ、何かしらの犯罪に利用されてしまったのかは、もはや誰にもわからない。
あなたのSNSアカウントにも、知らない誰かが投稿をしていないだろうか?