■沿線には由緒ある神社がズラリ

 

覚鑁堂
足守神社の開祖となった覚鑁上人を祀ったお堂

 本殿の横には、足守観音寺の開祖である覚鑁(かくばん)上人を祀った「覚鑁堂」が佇んでいる。約900年前の平安時代後期、覚鑁は水不足で苦しんでいた農民たち助けるため、灌漑用水用の大池の造営を決意する。

 

 しかし、予想以上の難工事となり、足を痛める人夫が続出。そこで覚鑁は、京都から愛宕山足千現(あたごさんあしせんげん)大明神を勧請して祀って祈祷すると、足を痛めた人夫たちはことごとく治癒したと伝えられている。

 

 その後、覚鑁は社殿を建立して観音寺と号する。これが足守観音寺と足守神社のはじまりである。

 

竈山神社
100年以上前から「赤ちゃんの名づけならここ」と参拝者が絶えない竈山神社

 

 そして足守神社のアクセス路線である貴志川線沿線には、約2600年前の創建で、日本でも屈指の格式を誇る日前宮(にちぜんぐう)、神武天皇の兄である彦五瀬命(ひこいつせのみこと)を祀る竈山(かまやま)神社、「木の神」である五十猛命 (いたけるのみこと)と妹の大屋都比賣命(おおやつひめのみこと)、都麻津比賣命(つまつひめのみこと)を祀る伊太祁曽(いたきそ)神社が鎮座する。

 

林業が盛んな和歌山らしく素戔嗚命の子で林業を司る五十猛命を祀る伊太祁曽神社

 そもそも和歌山電鐵貴志川線の前身である山東軽便鉄道は、日前宮・竈山神社・伊太祁曽神社の三社参りを目的として開業している。ちなみに、紀州国(和歌山県)は一国一社が通常の一宮(いちのみや)が三社あり、そのうちの二社は日前宮と伊太祁曽神社、もう一つはユネスコ世界文化遺産にも登録されている丹生都比売(にうつひめ)神社である。

 

 

■観光電車とネコ駅長がお出迎え

 

たま神社
猫を神として祀る、こちらも激レア神社な「たま神社」

 これらの由緒ある神社とは別に、もう一つ挙げておきたいのが貴志川線の終着駅、貴志駅のホームに鎮座する「たま神社」だ。

 

 たまとは2015年まで貴志駅の駅長を務めたネコの名前。生前の2011年に当時の知事から「和歌山県観光招き大明神」の称号が贈られ、死後に神社で祀られた。なお、現在の貴志駅長は「たまⅡ世」だが、初代のたまと血縁関係はない。

 

たま駅長
なお、こちらが初代たま駅長のご尊顔。凛々しい!

 

 和歌山電鐵は神社やネコの駅長以外にも車両に特徴があり、観光列車に力を入れている――というよりも観光列車しか運行していない。

 

いちご電車
なんともかわいらしい顔つきの「いちご電車」

 

 地元の名産であるイチゴをモチーフにした「いちご電車」や和歌山特産の「南高梅」をイメージした和風の「うめ星電車」、2021年から運行している「いまだかつてないネコ電車」をコンセプトにした「たま電車ミュージアム号」など、ラッピングだけでなく内装も工夫された車両が人気を集めている。これらの電車に乗るためだけに貴志川線を利用する観光客もいるほどだ。

 

こちらも人気の「たま電車ミュージアム号」

 神社や電車を存分に楽しみたければ、一日乗車券(大人800円)が便利。また、和歌山駅から貴志駅の運賃は410円なので往復するなら、途中下車をしなくても一日乗車券を購入したほうがおトクになるのでおススメだ。

 

 次回は奈良時代の偉人を祀る、京都御所近くの神社を訪ねてみよう。