■突然、見知らぬ男たちが!

様々な人間が集まるナイトマーケット。当然、そこには邪悪なモノも……。
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「&#$◎△%◎!!!」
怒鳴り声とともに、複数の男たちが3人を取り囲んだ。肌の色も服装もバラバラで、観光客には到底見えない。何か良からぬことを企んでいる雰囲気だった。
「逃げよう!!」
誰が叫んだのかもわからない。ただ、本能的に危険を察知した3人は、一斉に駆け出した。
「&#$◎△%◎!!!!!」
背後から怒声が響く。足がもつれそうになりながらも、3人は走り続けた。
どれくらい走っただろうか。突然、視界が開け、大通りに飛び出した。トゥクトゥクや観光客が行き交う光景が広がった。それを見た3人はホッとして、その場に座り込んだ。
■謎の声の主はどこにもいない?

ホテルに戻り、3人はロビーに集まり、無理に談笑して先ほどの恐怖を振り払おうとしていた。
「……マジで危なかった。さっきのは何だったんだろう」
アヤが震える声で言う。
「でもさ、最初に『あっちだよ』って言ったの、誰?」
ユウカの問いに、全員が顔を見合わせた。
「え? ミカでしょ?」
「いや、私じゃない。言ったのユウカちゃんだと思ってた」
「……違う! 私も誰かが言ったのかと思った」
「私も……」
誰も言っていない。だけど、確かに3人とも聞いていた。3人とも背筋が凍るのを覚え、誰も口を開かないまま沈黙が流れた。
「……やめよ、怖いから」
ユウカがそう言い、3人はそれ以上話さなかった。その時、たまたまロビーでくつろいでいた日本人男性が、何気なく言った。
「君たち、夜の街では気をつけろよ。特に人気が少ないエリアは絶対に女同士で行くなよ」
「え……?」
「強盗とか…時々、行方不明になるやつもいるって噂だ。特に若い女は人身売買の対象とされるとか……って噂もあるからさ」
冗談めかして話す男の言葉に、3人は顔を引きつらせた。
■謎の声の主はもしかすると…

彼女たちを誘った声の主は現実の人間だったのか、それとも……。
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「もしかして私たちもそれに狙われたの……?」
ユウカが震えながらさきほど起こった出来事を話すと、男はふいに真顔になった。
「そうか……。なかには時々、亡くなった奴らが出るって噂もある」
「……亡くなった人?」
「強盗とかに襲われて命を落とした人たちの霊が出るんだって」
ロビーが静まり返る。
「じゃあ、あの声は……?」
3人の背筋に冷たい汗が伝った。念願のカンボジアだったが、彼女たちは何かから逃げるように日本へと帰った。以来、旅行で夜間を移動する際は必ずタクシーを利用しているそうだ。