ワーケーションでパタヤに滞在している筆者、カワノアユミが、現地本当にあった怖い話”をお届けする「夜街怪談inタイ」シリーズ。今回は「パタヤの廃ディスコ」にまつわる怪異やきな臭い噂についてお届けする。

 

■パタヤ郊外の「廃ディスコ・X

 

タイの廃墟
華やかのリゾートの裏で「穴場の廃墟」がひしめいているパタヤ(写真はイメージ) 画像:shutterstock

 パタヤには、観光客にはあまり知られていない「手つかずの廃墟」が点在している。開発の途中で頓挫したコンドミニアム、コロナ禍で閉鎖した巨大レストラン、そして不吉な噂が絶えないナイトクラブ……。

 

 そのなかでも、地元の人々が決して近寄ろうとしない廃墟のひとつが、繁華街の外れに存在したディスコ「Xだ。

 

パタヤの繁華街の夜景

「X]がオープンした90年代初頭は街全体がバブル景気に浮かれていたパタヤ

(写真はイメージ)。 画像:shutterstock

「X」がオープンしたのは1990年代。当時のパタヤは、バブル経済の余波で外国人観光客が押し寄せ、ナイトライフが最高潮に盛り上がっていた時代だ。  

 

「X」は6階建ての巨大ディスコで、屋上にはネオンサインが浮かび上がり、街全体にその存在を誇示していた。

 

 

謎の火災で一夜にして崩壊

 

パタヤの夜街
パタヤの夜街の住人の間では「X」の崩壊について陰謀論めいたきな臭い噂まで。

 だが、オープンからわずか1年半で閉鎖。理由は、近隣住民からの苦情、違法な薬物取引、店内での暴力事件の多発。そして決定打となったのは、警察の強制捜査だった。店内で未成年者の飲酒と薬物使用が発覚し、即時営業停止となったのだ。  

 

 さらに不吉な出来事は続く。「X」は廃業から数カ月後——突然の火災に見舞われ、一夜にして建物の内部が崩壊した。しかも、その出火原因には今も謎が多いといわれている。

 

タイのディスコのイメージ画像

あくまで表向きは「電気系統の失火」とのことだが……(写真はイメージ)

画像:shutterstock

 

 地元メディアが報じた消防署の公式見解は「電気系統のショートによる失火」だったが、オーナーとビジネスパートナーの争いが原因の放火説も根強く囁かれた。さらには、「X」の存在そのものを危険視した警察が関与したという陰謀論めいた噂まであった。

 

 筆者は、Xにまつわる数々のきな臭い噂を確かめるべく、現地で取材を試みた──。

 

 

■廃墟の闇で踊る人影を目撃し…

 

暗い通りのイメージ

お化け好きのタイの若者の間でも「あそこはヤバい」と有名な廃ディスコ「X」。

画像:shutterstock

「『X』には近づかないほうがいいよ」

 

 そう忠告してくれたのは、バービア(注1)で働く女の子だ。彼女は数年前、友人たちと「X」に肝試しに行った経験があるという。

注1:日本でいう「ガールズバーに近い格安のバー。パタヤで有名なのはソイ6。

 

「私が行ったとき、友達が暗闇の中で踊っている人影を見たって……本当かどうかはわからないけれど……」

 

 彼女たちは「冗談でしょ?」と笑い飛ばしながら、その場を離れた。だが、その後、彼女の友人の一人は体調を崩し、数日間、高熱にうなされたという。

 

 そして、別のタイ人は「X」に関する、こんな不穏な噂を聞いたことがあるという。旅行でパタヤを訪れていたタイ人グループが「X」の噂を聞きつけ、興味本位で肝試しに向かったそうだ──。