日本初の夫婦喧嘩を仲裁

黄泉比良坂

島根県松江市(旧東出雲町)にある「黄泉比良坂」伝説の地。

画像:ChiefHira, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

 黄泉の国でイザナキが、「見ないで」と言われたのに、見てしまったところまでは同じ展開。 しかし、鬼女軍団に追いかけさせたりせず、イザナキとイザナミは、黄泉比良坂(よもつひらさか)で口論を繰り広げるのです。そしてイザナキは、

 

「あなたを悲しんで哀れに思ったのは、私の心が弱かったのだ」

 

 と言い放ちました。するとイザナミはイザナキへ遣いをよこし、

 

「私はあなたとすでに国を生みました。なぜこのうえさらに生むことを求めるのでしょう。私はここへとどまるべきで、一緒に行くことはできません

 

 と告げさせました。冒頭で紹介した有名なエピソードに比べればおとなしいものですが、二人の意見は真っ二つ。このままでは収まりそうもありません。

 

 しかし、そんなところに突如、現れたククリヒメノカミがイザナキに何かを申し上げると、イザナキは喜んでこれを褒め、去っていきました──。

 

■それぞれの道へと背中を推す

 

 冒頭で触れたように、ククリヒメノカミが登場するのはこのワンシーンのみ。イザナキに何を言って納得させたのかも謎なら、どのような出自なのかも謎なんです。

 

 ただ、血なまぐさい喧嘩別れではなく、”円満離婚”に導いたということで、「イザナキとイザナミの仲裁をした神」とされています。

 

 2柱で1代に数えられるほど一心同体ともいえる存在だったイザナキノミコトとイザナミノミコトも、死がもたらす穢れによって心まで離れてしまったかのようでした。

 

 しかし、ククリヒメノカミの働きによって、2神がともに生きて成し遂げたことの素晴らしさを心に留めつつ、区切りが来たことを受け入れ、憎み合うことなくそれぞれの世界へ前向きに向かうことができたのではないでしょうか。

 

■縁を解き、結び直す力のは…

 

加賀白山神社の杜

新たな道へ光を当て導いてくれる、それがククリヒメノカミなのかも。

(加賀白山神社の社叢)画像:shutterstock

 一度は結ばれた男女も、いつしか別れを選ばざるを得ないときがくるかもしれません。そこで憎しみ合い、ドロドロした争いを続けていくよりも、ともに過ごした時間を大切にしつつ、前向きにそれぞれの新たな道に向かえるならそのほうがよいとは思いませんか?

 

 そんなときはククリヒメ様にお参りして、不要になった縁は前向きに解きほぐし、新たなご縁を結んでいただくとよいのではないでしょうか。

 

 それにしても、ククリヒメノカミは謎が多すぎて、安易にお願いして大丈夫なのかちょっと不安になりませんか? 次回は、そのあたりを深堀りしてみましょう。

 

【第9回 ククリヒメノカミに祈願するとき絶対守るべきこと】は6月8日18時公開予定