人気の浮き沈みが激しい韓国芸能界で、20年にわたってずっとトップクラスの女優であり続けている人は誰なのか。
そんなことを思っていて真っ先に浮かんだのがソン・イェジンだった。
彼女はまさに稀有な人だ。
■女子高校生役から清純スター、トップ女優への道を歩んだソン・イェジン
思えば、ソン・イェジンが出演する作品を初めて見たのは2003年だった。
ソウルで夜の空いた時間にたまたま入った映画館で、彼女がチャ・テヒョンと共演した映画を上映していた。ソン・イェジンは活発な女子高校生を演じていたが、やたらと賑やかな映画だったという印象しか残っていない。タイトルも『初恋死守決起大会』と完全にお笑い系になっていた(日本では『君に捧げる初恋』という邦題だった)。
そのあと、韓国で特別に評判がいい映画『クラシック』を見に行ったら、主演女優が持つ抒情性に目を見張った。それもソン・イェジンだった。映画は日本で『ラブストーリー』という邦題で公開されたが、『初恋死守決起大会』の女子高校生の役とはイメージがまるで違った。正統派の清純スターの誕生を印象づけたのだ。
以後は常に注目してソン・イェジンの出演作を見ていた。ユン・ソクホ監督の四季シリーズの第3作『夏の香り』、人気絶頂だったチョン・ウソンと共演した映画『私の頭の中の消しゴム』、そして、ペ・ヨンジュンと共演した映画『四月の雪』である。2003年から2005年にかけてソン・イェジンは素晴らしい作品の中心で輝いていた。
特に、『四月の雪』が日本で公開されたときの興奮が忘れられない。
ヨン様ブームが最高潮のときだっただけに、公開初日に日比谷に見に行ったら、上映終了後に観客席から拍手が沸き起こった。ペ・ヨンジュンのファンの熱気をストレートに感じたが、共演したソン・イェジンのはかなげな美しさもスクリーンを通して伝わってきた。
正直言って、10歳上のペ・ヨンジュンとの共演は荷が重かったと思う。演じた役も、夫がダブル不倫の当事者と事故を起こし瀕死の重傷を負うというものだった。
演じたときは23歳。「確かに若すぎたかもしれない」というキャラクター設定だったが、すでにトップクラスの女優に成長していたソン・イェジンにとって『四月の雪』は多彩な表現力への試金石であったかもしれない。