■日本人の瓶ビール1本が、韓国人にとってソジュ1本の感覚

 長年、日本の人たちと酒を酌み交わしているが、たしかに韓国人のほうが日本人よりよく飲むし、簡単にはベロベロにならない。その差を数値化するのは難しいが、代わりに私がよく使っているのが、「日本人がビール大瓶1本飲む感じで、韓国人はソジュを1本空ける」という表現だ。日本のビール大瓶は633mlでアルコールは5度、韓国のソジュは360mlで16度である。

ソウル乙支路4街のシュポ(小さな食料雑貨店)の店先でソジュを6本空けた男性2人

 上の写真を見てほしい。中年男性2人がソジュを6本空けている。彼らは顔こそ少し赤らんでいるが、舌がもつれることもなく会話を楽しんでいる。日本の人から見れば大変な酒豪に見えるかもしれないが、これがソジュではなくビール大瓶だったら、それほど驚かないだろう。

 私と同世代の50代韓国人男性は、仕事から家に帰って晩酌するとしたらソジュ1本が適量だと思う。ステイホームで家飲みを積極的に楽しむ人が増え、ワインの消費量が増えるなど飲む酒は多様化しているが、アルコールの平均摂取量としてはそんなものだろう。いくら韓国人が酒に強いとはいえ、話して発散する相手がいなければ早く酔いが回るのは日本人と同じである。

■我々はなぜソメク(ソジュ+ビール)を飲むのか

 ソジュ+メクチュ(ビール)のことを「爆弾酒」と言う。いつからか韓国では「ソメク」という略称が使われるようになったが、いずれも韓国人が酒に強いことを象徴する言葉として日本の人に受け止められているようだ。

 そもそもなぜ我が国の人々は酒を多く飲むのか。それは、朝鮮半島が歴史的に常に不安定な状態にあったことと無縁ではないだろう。周辺国から侵略されてきた歴史。北側との緊張関係。軍事独裁政権による圧力。1997年には通貨危機でIMFの世話にもなった。昨今は格差社会が深刻化し、スペック(学力、家柄、コネ、容姿など)競争が激しく、社会人だけでなく学生も大きなストレスにさらされている。これは話題の韓国ドラマ、Netflixシリーズ『今、私たちの学校は…』や『二十五、二十一』でも象徴的に表現されているので日本の人も想像がつくのではないだろうか。