■韓国における刺身の地位は?

 Netflixシリーズの韓国ドラマ39歳』第6話の冒頭、ソン・イェジンたちが高級そうなレストランの個室で刺身を食べるシーンを見て、またか……と思ってしまった。

 我が国では刺身は「日式」と呼ばれ、代表的な日本料理である。この20年間で、チャムチチプ(マグロ刺身食べ放題専門店)をはじめとする大衆的な刺身店が定着したものの、いまだに高級なものというイメージが強い。牛焼肉も昔から高価だが、刺身はそれと同等かワンランク上と言ってよいだろう。

 それゆえ、接待や祝いの席、政治家や企業家の会食、密談の場によく登場する。その場合、ソジュ(焼酎)はもちろん飲まれるが、洋酒(ウイスキー)、最近は高級な日本酒も多い。

全羅南道木浦での会食の席で供された刺身、刺身、刺身
全羅南道の地元ソジュ、イプセジュ

■ドラマや映画に出てくる気の毒な刺身とチャミスル

 映画やドラマに登場する刺身、なかでも高級店で刺身を食べるシーンには共通点がある。それは食事そのものをまったくと言っていいほど楽しんでいないことだ。深謀遠慮のもくろみが渦巻く会食。謀略をめぐらす会食。誰かに取り入ろうとしたり、誰かのマウントを取ろうとしたりする席が楽しい食事の場であるはずがない。

 いわゆるノワールと呼ばれる映画やドラマの会食には刺身がつきものだ。配信や手持ちのDVDで確認してもらいたい。