韓国エンターテインメント最大のアワード、第58回「百想芸術大賞」が、来月5月6日に開催される。開催に先立ってノミネートが発表になった。
 今回の映画部門ノミネート作のなかで最も注目を集めているのが、昨年韓国で大ヒットした『モガディシュ 脱出までの14日間』だ。作品賞、監督賞、男性最優秀演技賞を始め、7部門でノミネート。日本でも7月1日(金)から全国ロードショー公開される。

 韓国ソウル在住のエッセイスト、チョン・ウンスク氏に、本作の題材となる歴史的な出来事と、映画の見どころについて話を聞いた。

■ソマリア内戦下で起きた事実をもとにした『モガディシュ 脱出までの14日間』

「日本では2006年に公開された映画『トンマッコルへようこそ』を覚えている人も多いと思います。朝鮮戦争のさなか、山村で出くわした韓国と北朝鮮の軍人が呉越同舟する話で、彼らが世話になった村人を戦火から守るために協力し合う、一種の歴史ファンタジーでした。『モガディシュ 脱出までの14日間』も、南北の呉越同舟がテーマなのですが、こちらは事実がもとになっています。

 1991年、韓国と北朝鮮は国連加盟の承認を得るため、アフリカ各国でロビー活動を繰り広げていました。当時の南北関係は、金大中・廬武鉉・文在寅の訪朝を経た今では想像もできないくらいの緊張関係にありました。1983年にはラングーン・テロ事件、1987年には大韓航空機爆破事件があったばかりですから。

 ところが、両者がソマリア共和国の首都モガディシュに駐在していたとき、ソマリア政府と反乱軍の内戦が勃発。反乱軍に襲われた北朝鮮の駐在員は大使館に居られなくなり、あろうことか韓国大使館に助けを求めます。

 ソマリア脱出という共通の目的のために同じ時間を過す両者。彼らは国家の対立関係を超え、ひとりの人間として心を通わせることができるのか? 最終的には銃を向け合うのか? そのあたりが『モガディシュ』の見どころですね」(チョン・ウンスク氏)