イ・ビョンホン演じる行商のドンソクが腹を立てる理由

 その極めつけが第2話の冒頭のシーンだ。

 トラックに野菜や海産物、金物や工具などを詰め込んで行商している万物商のドンソク(イ・ビョンホン)は、なじみ客のハルモニが他の行商人からイカを買ったと聞いて憤慨する。近くで畑仕事をしている人たちに、

「いつものサバがあるのになぜ買わない?」

 と食ってかかったうえ、トラックに集まっている客にはこう言う。

「帰ってくれ! 今日はもう店じまいだ! なぜウチで買わないんだ? 体調の悪いときでも休まず売りに来てるのに。金物や工具は他で買ってもいいが、生ものはオレから買うべきだろ! あんたらはハルモニが他の奴から買うのをなぜ止めないんだ!」

 ドンソクは客の前でさんざん悪態をついた揚句、こんなもの捨ててやると海産物の入った箱を地面に叩きつける。これには笑ってしまったが、ドンソクは客から個別に電話で注文を受け、本土で商品を買い、船に乗って済州に来ているので、気持ちはわからないでもない。

「どこで誰から買おうが客の自由。ドンソクの言っていることはむちゃくちゃだ」

 我が国より都市化がずっと早く進み、個人主義が発達している日本からは、そんな声が聞こえてきそうだ。

 しかし、我が国ではソウルや釜山などの都市部でも、市場ならこんな人間関係がけっこう残っている。田舎に行けば、僻地や島に行けばこれが日常と言っても言い過ぎではない。

済州の南の端、西帰浦市にある毎日オルレ市場
本土と島を結ぶフェリーで見かけた万物商のトラック

 第4話で制服のスカートを短くしているヨンジュ(ノ・ユンソ)に、「もっとスカートを下ろしな!」と口うるさく言うスニ(イ・ジョンウン)を見て、懐かしい気持ちになった。日本の人には過干渉のように見えるかもしれないが、これも愛情なのだ。

 私も1980年代末、光化門前をミニスカートで歩いていたら、韓服姿の見知らぬハルモニに、「女がそんなに脚を見せるもんじゃない!」と怒られ、お尻を叩かれたことがあるのだ。

済州北部の朝天港にある老人亭(高齢者の集会所)で花札を楽しむハルモニたち