こうして恵慶宮の配下に入った宜嬪・成氏は、必然的に、恵慶宮の長男であるイ・サンと間近に接することになる。2人が初めて会ったのは1762年で、イ・サンが10歳で宜嬪・成氏が9歳であった。

 この2人には、もう1人の重要人物が関わってくる。それがイ・サンの妻であった孝懿(ヒョウィ)王后である。

 孝懿王后は1753年に生まれた。つまり、宜嬪・成氏と同じ歳である。

 そして、孝懿王后がイ・サンと結婚したのも1762年であった。

 ちなみに、孝懿王后は朝鮮王朝518年間にいた王妃42人の中で「最も性格が良かった」と言われている。本当に人徳がある王妃だった。

 そんな孝懿王后は、姑(しゅうとめ)である恵慶宮のそばに付いていた宜嬪・成氏にも優しく接していた。同じく、宜嬪・成氏も孝懿王后をとても慕っていた。2人は身分の違いを乗り越えて大変いい関係を築いていたのである。

 しかし、イ・サンが宜嬪・成氏を愛するようになってからは、孝懿王后も決して穏やかにはいられなかった。その気持ちを察して、宜嬪・成氏はイ・サンから受ける寵愛を心苦しく思うようになった。

(次回に続く)