イ・ジュノ(ジュノ/2PM)が主演した韓国ドラマ赤い袖先(原題)』は2021年11月から韓国MBCで放送されて、朝鮮王朝後期の名君であったイ・サン(正祖〔チョンジョ〕)と彼が愛した宮女の高貴な愛を描いて、社会現象を巻き起こすほど大人気となった。

 イ・ジュノはこのドラマの演技で2022年百想芸術大賞・テレビ部門の最優秀演技賞(男優)を受賞し、K-POP出身の俳優として史上初の栄誉を獲得した。

 そのイ・ジュノが演じたイ・サンが最も愛した宮女を演じたのがイ・セヨンで、子役出身の彼女は大人の主演女優として大成し、『赤い袖先』でも情感あふれる宮女ソン・ドクイムの役を瑞々しい感性で演じて絶賛を浴びた。

 そのソン・ドクイムは歴史的には宜嬪・成氏(ウィビン・ソンシ)と呼ばれている。『赤い袖先』の爆発的な人気にともなって史実の宜嬪・成氏も大いに注目されるようになった。

 そこで、彼女が実際にどのような女性であったのかを史料を基に解説してみよう。

『赤い袖先』画像出典:MBC

■イ・サンが最も愛した女性、宜嬪・成氏はどんな人物だったのか

 宜嬪・成氏の本名は成徳任(ソン・ドクイム)で、生まれたのは1753年である。

 父親は、洪鳳漢(ホン・ボンハン)の使用人(下働き)になっていた。それが宜嬪・成氏の人生を大きく左右していた。

 なぜなら、洪鳳漢は思悼世子(サドセジャ)の岳父(妻の父)だったからだ。

 思悼世子は父の英祖(ヨンジョ)の怒りを買って米びつに閉じ込められて餓死したことで有名だ。それは1762年の大事件であった。

 彼の妻は後に恵慶宮(ヘギョングン)と称されたが、その恵慶宮の父親だった洪鳳漢は使用人の娘であった宜嬪・成氏に目をかけ、その縁で彼女は9歳のときに王宮に入り、宮女の見習いとなった。その際、宜嬪・成氏は恵慶宮の元に預けられた。これも、洪鳳漢の配慮があったものと思われる。