イ・ジュノ(ジュノ/2PM)主演の韓国ドラマ赤い袖先』でイ・セヨンが演じた宮女ソン・ドクイムは、歴史的に宜嬪・成氏(ウィビン・ソンシ)と称された。

 彼女は1762年に宮女となり、恵慶宮(ヘギョングン)のもとで働いた。

 当時、恵慶宮は昌徳宮(チャンドックン)に住んでいた。彼女の息子であるイ・サンは世孫(セソン/国王の後継者となる孫)という立場で慶煕宮(キョンヒグン)に居住していた。それでも、夫(思悼世子〔サドセジャ〕)を亡くして悲しみに暮れていた母を訪ねて、ひんぱんに昌徳宮にやってきていた。

 その際に、10歳のイ・サンは9歳の宜嬪・成氏を見初めた。以後、イ・サンにとって宜嬪・成氏は片時も忘れられない女性となった。

■ジュノが演じたイ・サン、叶わぬ恋の運命

 すでにイ・サンは孝懿(ヒョウィ)王后と結婚していたが、彼の心を占めていた女性は間違いなく宜嬪・成氏だった。

 その気持ちが高じて、1766年にイ・サンは宜嬪・成氏に対して「承恩」を受けるように命じた。この承恩は国王が意中の女性と一夜を共にすることを指している。イ・サンはまだ国王ではなかったが、国王に準じる立場として意中の女性を側室にすることは可能だった。

 しかし、宜嬪・成氏が承恩を拒絶した。それは、前代未聞の出来事だった。

 王宮で奉職する宮女は、立場上は国王と結婚していると見なされていた。それだけに、国王や世孫の承恩を受けないというのは重大な叛逆である。命を奪われても仕方がない大罪だった。

 なぜ、それほどまでして宜嬪・成氏は承恩を受けなかったのか。

『赤い袖先』画像:MBC