■名優アン・ソンギが映画『ラジオスター』で扮した海苔巻き売り

 家族のために海苔巻き屋を生業にすると聞いて思い出すキャラクターがいる。2006年の映画『ラジオスター』(イ・ジュニク監督)のレコード大賞歌手チェ・ゴンのマネージャー、パク・ミンス(アン・ソンギ)だ。

 チェ・ゴンが全盛期を過ぎ、大麻や暴力事件で落ちぶれていき、生活が苦しくなったミンスは、妻に小さな海苔巻き屋を開業させる。出張先からソウルに戻ったときは、妻は店の掃除を済ませ、売れ残った海苔巻きが入っている段ボール箱を抱え、娘とともに店を出て行くところだった。その姿が不憫で声もかけられないミンス。数日後、再び店を訪れると、そこには「廃業」の貼り紙が……。

 わけあってチェ・ゴンと袂を分かってからは、麻浦駅前で妻と仲良く海苔巻きを売るミンス。その姿は涙ぐましくもあり、微笑ましくもあった。

 2006年当時の海苔巻きはひとつ1000ウォン。今は安くても3000ウォンはするが、材料費も高騰しているので薄利もいいところである。

 国民俳優アン・ソンギが熱演したミンスをDVDで見返すと、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で、娘ヨンウのために、毎日丹精込めて海苔巻きを作る父グァンホが愛おしく思えてくる。