最近、我が国のドラマを観ていると、端役の中堅俳優の演技に目を奪われることが多い。彼らの名前はすぐには思い出せないが、20数年前から映画で活躍していた人たちがほとんどだ。記憶をたどり、ああ、あの映画に出ていた人だと合点がいくと、旧友と再会したようなあたたかい気持ちになる。

 Netflixで大ヒット中の韓国ドラマウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を観ていたときも、そんなことが何度もあった。

 今回は最終回でチェーン付きのメガネをかけた冷静な裁判長を演じた女優、オ・ジヘ(1968年生まれ)に注目してみよう。彼女は90年代後半の韓国映画を語る上で欠かすことのできない名作3本に出演している実力派である。

■“興行の保証手形”ハン・ソッキュの妹役を演じた『グリーンフィッシュ』

 女優オ・ジヘを初めて認識したのは、1997年の映画『グリーンフィッシュ』(イ・チャンドン監督)だ。名匠イ・チャンドン監督のデビュー作である。オ・ジヘは、当時 “興行の保証手形” とまでいわれた人気俳優ハン・ソッキュ扮するマクトンの妹スンオクを演じた。

 母親には工場に勤めていると嘘をつき、事実上ホステスをしているところを除隊した兄に発見され、最初は逃げようとするが、観念するとすぐに仲のよい兄と妹に戻るシーンはじつにリアリティがあった。生活のためには水商売も辞さない現実的な妹が、除隊したばかりで世間知らずな兄に、「お金を稼ぐってそんなに簡単じゃないのよ」と言いながら、口止め料を渡すシーンはなんとも微笑ましかった。

オ・ジヘ扮するスンオクが働いていたのは茶房(タバン)と呼ばれる接待婦付きの喫茶店。写真は大邱に実在した典型的な茶房

■オ・ジヘの悲しみと思慕の演技が印象的な『娼』

『娼』(1997年、イム・グォンテク監督)は、1970年代後半、工場で働くつもりで上京したが、半ば騙されるかたちで娼婦になったパンウリ(シン・ウンギョン)が主人公。オ・ジヘが演じたのは同じ娼婦でもとうが立った姉貴分、エリだった。『グリーンフィッシュ』のスンオクが躁なら、『娼』のエリは鬱のキャラクターだ。

 悲しい境遇にありながらも、稼ぐことに生きがいを見出していく逞しいパンウリと違い、エリは娼婦の悲しさを静かに表していた。ソウルから地方の私娼街へと流れて行った二人は、出逢っては別れ、出逢っては別れを繰り返す。最後に流れ着いたのは90年代ソウルの場末の置屋だった。

 当時の娼婦にとっては致命的な災難に遭ったエリはクルマに載せられ、パンウリと目と指先だけで別れのあいさつをする。そのときのエリの悲しみと妹分に対する思慕の情の入り混じった表情の演技には息をのんだ。

筆者の地元、ソウル江東区の千戸洞にも2年前まで私娼街があった