■韓服姿も似合っていた『暗殺

 イ・ジョンジェチョン・ジヒョンハ・ジョンウら豪華キャストの歴史アクション映画『暗殺』(2015年)。チン・ギョンは、日本の要人にこびへつらい、甘い汁を吸おうとする夫(イ・ギョンヨン)を心から軽蔑。静かだが、次のような厳しい言葉を投げる妻ソンシムを演じた。

 銃を向ける執事(キム・ウィソン)「奥さま、目をお閉じください」

 ソンシム「なぜ私がおまえの前で目を閉じなきゃならないの?」

 この人は韓服もよく似合う。ソンシムは映画開始から2分ちょっとでその生涯を終えるが、最後まで誇りを失わない姿にグッとくる。

映画『暗殺』で駅の利用客が日の丸に拝礼するシーンが撮影された旧・京城駅舎(現在は博物館)
映画『暗殺』でチン・ギョン扮するソンシムの娘(チョン・ジヒョン)が買い物を楽しんだ三越京城店は現在、新世界百貨店(右手の旧館)になっている

■社会正義を貫く妻を演じた『目撃者

 サスペンス・スリラー映画『目撃者』(2020年)。主人公(イ・ソンミン)は、アパートの庭で起きた事件に巻き込まれ、犯人と世間のしがらみの板挟みになり苦悩している。

 チン・ギョン扮する主人公の妻は『ベテラン』や『暗殺』の恐妻ぶりと比べると平凡な主婦にしか見えないが、いざとなると犯人や世間に対して果敢に挑み、社会正義を貫こうとする。その姿に心打たれる。終盤、妻の夫に対するある好意を見て、こんな奥さんがほしいと思った男性は多いのではないだろうか。

映画『目撃者』の舞台は、韓国の風景を変えた高層マンション群。写真はソウルの永登浦から南方向の風景