韓国映画韓国ドラマに登場することで、新たな意味をもった食べ物がある。

 そのいい例が、ユ・ジテイ・ヨンエの主演映画『春の日は過ぎゆく』のラーメン。そして最近、Netflixドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』と『ナルコの神』で新たな役割を得た海苔巻きキンパ)だ。

専門店で買った海苔巻き。具はソーセージ、卵、チーズ、おでん、タクワン、ホウレンソウ、ゴボウ、ニンジンなど

■ラーメンはОKサイン?

「(ウチで)ラーメンでも食べる?」

 韓国で女性からこう言われたら、今夜は彼女の家にお泊り。

 いったいいつからこんな連想が生まれたのだろう? じつはこれが意外と新しい。

 2001年の映画『春の日は過ぎゆく』に次のような場面があった。

 夜、サンウ(ユ・ジテ)がウンス(イ・ヨンエ)をアパートまでクルマで送った。二人とも名残惜しそう。ウンスが再びクルマに近づいて言う。

「ラーメンでも食べてく?」

 サンウを家に招き入れたウンスはラーメンを茹でながら言った。

「泊ってく?」

 ラーメン→お泊りの構図は、市井の若者たちから自然発生したものではない。この場面から生まれ、その後、ドラマやバラエティなどでたびたび話題になり、既成事実のようになっていったのだ。

 もともとラーメンは恋愛からもっとも遠いものだった。本来のラーメンのイメージは、奇しくも『春の日は過ぎゆく』と同じ年に公開された映画『パイラン』やNetflixドラマ『私たちのブルース』のほうが的確に伝えている。

 前者はチェ・ミンシクとコン・ヒョンジン扮するチンピラヤクザが、掃除もしていない部屋で食べたラーメン。後者はイ・ビョンホン扮する行商人が路上でわびしくすすったラーメンだ。

 これが小道具としてのラーメンの王道である。日本のみなさん、くれぐれも誤解なさらぬよう。