Netflix韓国ドラマ『ナルコの神』で、ハ・ジョンウ扮する主人公の敵役を演じたファン・ジョンミンは1970年生まれなので、すでに52歳。しかし、いつまでも若々しい。
じつは1970年はスター俳優の当たり年だ。
たとえば、『私たちのブルース』の主要人物であるイ・ビョンホン、チャ・スンウォン、イ・ジョンウンの3人。そして、『エクストリーム・ジョブ』のリュ・スンリョン。『コンフィデンシャル/共助』のユ・ヘジン。『国家が破産する日』のキム・ヘス。『ソニはご機嫌ななめ』をはじめとするホン・サンス監督作品のチョン・ジェヨン。『パパとムスメの7日間』のユン・ジェムン。『焼肉ドラゴン』のキム・サンホ。いずれも1970年生まれだ。
1970年生まれの俳優としては、いまやイ・ビョンホンと人気を二分するファン・ジョンミンの映画史談義を続けよう。
■恐怖支配キャラが確立されたノワール『新しき世界』
のちの『哭声/コクソン』『アシュラ』『ナルコの神』で見られる、笑顔が怖い恐怖支配キャラが確立されたのが、『新しき世界』(2012年/パク・フンジョン監督)だ。
今をときめくスター、イ・ジョンジェ(『イカゲーム』)の透明感とファン・ジョンミンの粘っこさが好対照で、新しいキャラの確立という意味では二人とも得をした作品といえる。
本作で、ファン・ジョンミンは『ユア・マイ・サンシャイン』に続き、二度目の青龍映画賞主演男優賞を受賞した。
■好漢ファン・ジョンミンを再確認できた『国際市場で逢いましょう』
ファン・ジョンミンを押しも押されもしないスーパースターの座に押し上げたのが、歴史ヒューマンストーリー『国際市場で逢いましょう』(2014年/ユン・ジェギュン監督)。韓国で1400万人以上を動員した歴代3位の超大ヒット作で、数多くの映画賞を受賞した。
朝鮮戦争による南北離散家族や世代の断絶がテーマだが、ファン・ジョンミンの純情青年演技に笑ったり泣いたりしているうちに2時間があっという間に過ぎてしまう。
北朝鮮の港で生き別れになった妹とのハイライトシーンで、韓国人の多くが心を揺さぶられ、涙腺崩壊を止められなかった。筆者の母親は朝鮮戦争のときにファン・ジョンミン扮する主人公同様、北から避難してきた人なので余計である。
映画を比較的冷静に観る人が集まっているはずの試写会会場で、あちこちから嗚咽が聞こえてきた稀有な作品だ。