■違和感ゼロ!主人公キム・ユジョンの成長した姿を演じたハン・ヒョジュ

 主人公の女子高校生ボラを演じた子の顔に見覚えがあると思い、しばらく考えたが思い出せなかった。物語の終盤、ボラが今まで心にしまっていた感情を爆発させるシーンがあるのだが、そのときの表情を見てハッとした。キム・ユンソクハ・ジョンウ主演のサスペンス映画『チェイサー』(2008年)で、母親と生き別れになった可哀そうな少女ウンジを演じた子だったのだ。

 キム・ユンソク扮する元刑事に保護されていた娘が、最初は気丈にふるまっていたのだが、あることをきっかけに少女らしい弱さを見せたときの表情と完全に符合したのだ。気づいてみれば面影があり過ぎだ。

 彼女の名前はキム・ユジョン。1998年生まれ。『チェイサー』の撮影のときは10歳くらいだったあの子がこんなに大きくなって……。と、親戚のおばちゃんと化した私は相好を崩してしまった。子役で活躍後、パク・ボゴム主演の大ヒット時代劇『雲が描いた月明り』(2016年~2017年)のヒロイン役など、今は大人の俳優として活躍しているという。

 そして、成長したボラを演じたのは『春のワルツ』(2006年)や『トンイ』(2010年)のハン・ヒョジュだ。映画でもドラマでも成長後の配役には「あれっ!?」と思うことが少なくない。たとえば、主人公チョン・ウの30年後をキム・ユンソクが、ヒロイン、ハン・ヒョジュの30年後をキム・ヒエが演じた映画『セシボン』(2015年)は、2人のあまりの印象の違いに白けてしまったことがある。

 しかし、『20世紀のキミ』のキム・ユジョンとハン・ヒョジュは違和感のなさでは屈指である。顔が似ていることももちろんあるが、ハン・ヒョジュの演技力の賜物ともいえるだろう。

 なお、ボラの父を演じたのは、韓国を代表する ”隣のおじさん” チョン・ソギョン。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』でウ・ヨンウの親友トン・グラミの父親役を演じていた俳優である。

 また、女子高校生ボラの親友を演じたのは、『私たちのブルース』でも女子高校生を演じたノ・ユンソだ。

『製パン王キム・タック』やソ・ジソプ主演ドラマ『カインとアベル』が撮影された清州のタルトンネ、スアムゴル

■ヒロインとピョン・ウソク演じるBFを結び付けたイ・ジョンジェ主演映画

 物語のキーになったのは1本のレンタルビデオだった。劇中、「18歳未満にレンタル禁止」「いやらしい映画」といったセリフがあるので、どんな作品かと思ったら、イ・ジョンジェ&イ・ミスク主演の映画『情事an affair』(1998年)だったので吹いてしまった。

イカゲーム』の主人公のダメ男役でイ・ジョンジェを知った人なら、きっと笑ってしまうであろう寡黙な二枚目演技が印象的な作品である。この映画については以前、本コラムのイ・ジョンジェ記事で紹介している。余白のある、とてもいい映画なのだが、90年代の高校生には刺激が強すぎるかもしれない。20世紀のキミを観た人はきっと『情事 an affair』を観たくなると思うので、DVDや配信で探してみてほしい。