■雌牛カルビとおでん串

 ホヨルが執着するアムソカルビは、雌牛のやわらかいカルビのことだ。

 釜山を旅行する人の多くが海雲台の高台にある有名店『ソムンナン・アムソカルビ』を目指す。観光シーズンには大型観光バスが大量に乗り付けるベタな人気店である。1964年創業の老舗で、かつてAPEC(アジア太平洋経済協力機構)会議が釜山で開かれたとき、各国首脳がここで食事している。店舗は数棟の韓国式の離れで構成されているので、個室でゆっくり霜降りカルビを楽しめる。

ホヨルが楽しみにしていたアムソカルビ。写真は他店のもの

 結局、ホヨルは首都防衛司令部のD.P.組長(ぺ・ユラム)の支援で忙しくなってしまい、目当ての『ソムンナン・アムソカルビ』には行けなかった。よほど未練だったのか、PCバンでしょぼいアムソカルビ丼をテイクアウトし、翌日聞き込みに行った脱走兵の父親宅で食べようとするシーンには笑ってしまった。

 なお、D.P.組長を演じたペ・ユラムは、映画『チャンシルさんには福が多いね』(2020年)を観た人なら覚えがあるだろう。そう、主人公チャンシル(カン・マルグム)が惚れた短編映画監督だ。

 また、『D.P. -脱走兵追跡官-』3話でホストに化けるためにカツラをかぶったチョン・ヘインを見て思い出したのだが、彼は映画『ユ・ヨルの音楽アルバム』(2019年)で主人公(キム・ゴウン)が恋焦がれた相手役だった。軍人のジュノとはまったく違う役柄なので、気づかなかった。『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』など、ドラマで大活躍の俳優らしい。

 このドラマは、兵役というメインの重いテーマ以外にも見どころが多そうだ。

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