今年の後半は、『シスターズ』や『D.P. ─脱走兵追跡官─』などヘビーな韓国ドラマを続けて観ていたせいか、『エージェントなお仕事』はとても気楽に鑑賞できている。韓国ではtvNで放送、日本ではNetflixで配信されている本作。毎回、俳優と関係者とのあいだで大小のトラブルが起きるのだが、たいていすっきり解決するので後味がよい。
■ホ・ソンテとクァク・ソニョンが演じた愉快な酒戦争
『エージェントなお仕事』9話でもちょっと愉快ないさかいがあった。
ガーデンパーティ会場の片隅でメソッド・エンターテインメントのク・ヘジュン新代表(ホ・ソンテ)と強気な女性チーム長チョン・ジェイン(クァク・ソニョン)がウイスキーを飲むシーンだ。二人は高校の同窓生で黒歴史ともいえる因縁があるため常にいがみ合っている。
一方がストレートでウイスキーを飲めば、もう一方も負けじと自らのグラスにウイスキーを注ぐ。もちろん二人とも一気だ。飲み干したあとはガラステーブルを割らんばかりにグラスを乱暴に置く。そのたびにカッ! と音がする。飲みのペースはどんどん早くなる。カッ! カッ! カッ! つぶれるのはどちらか? それはドラマで確認してほしい。
こうした酒戦争(술 전쟁/スル チョンジェン)を見ると、1990年代を思い出す。当時は「今日は本気で飲むか」という気分のときは、ウイスキーを選ぶことが多かった。ソジュ(焼酎)+ビールの爆弾酒(폭탄주/ポクタンジュ)が主流になる前、爆弾酒の主流はウイスキー+ビールだったのだ。
メソッドの二人のように競うように飲む者は、爆弾酒やストレートを。節操のある者はウィスキーの牛乳割りを飲んだりした。今のようにワインだ、マッコリだ、伝統酒だと酒が多様化していない時代の話である。