■風情ある駅舎と列車が醸し出す余韻
本作はITが高度に発達した2025年の朝鮮半島が舞台なのだが、物語後半に登場した駅舎と列車はそれとは不釣り合いにクラシックで、物語に余韻を与えていた。その駅舎は私が何度か訪れた中国東北部の旧満州地域のそれとよく似ていた。
列車が動き始める少し前、駅名のハングルと漢字が遠目に見えた。画面をPAUSEにして目を凝らして見ると、鳳東(봉동=ボントン)と書かれている。
鳳東駅は現在、北朝鮮領に実在する。日本が京城と新義州の間に敷いた鉄道路線(後の京義線)で1923年に開業。この駅を北上すると開城駅。南下すると劇中のJEA(共同経済区域)、現実には南北の共同運営が停止している開城工業団地に至る。
韓国の一般人が行ける北限の駅は都羅山駅。そこからひとつ先の板門駅、そのさらにひとつ先が鳳東駅だ。今は本作に映っていたような駅舎はないという。
いつか、私もこの駅に降り立ってみたい。そして、ここから列車に乗ってさらに北へ行ってみたい。1話でソウルドリームを夢見てこの列車に乗ったトーキョーと逆コースで。