■映画『国際市場で逢いましょう』では朝鮮戦争で故郷に帰れなくなった男性と結婚

 朝鮮半島の人々なら誰でもそうではあるのだが、キム・ユンジンは南北分断に特別な思い入れがあるのか、2014年の大ヒット映画『国際市場で逢いましょう』にも出演している。

 本作で彼女が演じたのは、朝鮮戦争時に北朝鮮から釜山に避難してきた男性の妻。ドイツの炭鉱に出稼ぎに行ったが落盤事故で負傷した男性(ファン・ジョンミン)を看護したことをきっかけに恋仲になり、やがて結婚する。

 避難時に生き別れになった父や妹との再会を切望しながら、釜山でともに暮らす家族のために身を粉にして働く夫。ドイツだけではない。弟の進学や妹の結婚のために戦時のベトナムにまで出稼ぎに行き、片脚を引きずって帰国する。

2000年の釜山、国際市場。当時はまだ屋根で覆われていなかった
ファン・ジョンミン扮する夫とキム・ユンジン扮する妻が切り盛りした雑貨店「コップンの店」の撮影地

 キム・ユンジン演じる妻はそんな愚直過ぎる夫を罵倒しながらも支え続ける。ラストシーンで、老夫婦は釜山のタルトンネにある多世帯住宅の屋上で横並びに座る。

 夫(ファン・ジョンミン)「おまえはどうしてオレと結婚したんだ?」

 妻(キム・ユンジン)「愛してるから」

 こんなベタなセリフもキム・ユンジンの風格で成立してしまう。

 『ペーパー・ハウス・コリア』の後半6話を完走する前に、『シュリ』と『国際市場で逢いましょう』を見ておくと、キム・ユンジンの演技にさらに奥行きが感じられるはずだ。

『国際市場で逢いましょう』のラストシーンで、でファン・ジョンミンとキム・ユンジン扮する老夫婦が眺めた釜山港の風景

 

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 2部 17:30~19:00 情報交換会(日本のみなさんの韓国ロスの癒し方や、久しぶりに訪韓した人の目に映った韓国の姿などを聞きます。また、講師が半年がかりで取り組んできた新たな仕事についても話します)

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