2022年は韓国ドラマの当たり年で、映画好きの私でも1年間途切れずに楽しむことができた。筆者が夢中になったドラマ7作を振り返るコラムの後編は、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』『ナルコの神』『シスターズ』『エージェントなお仕事』を取り上げる。年末年始に観るドラマ選びの参考にしてほしい。

●ヒューマンドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(全16話)

私たちのブルース』が、都会のスペック戦争で傷つき、疲れた人々を癒すドラマなら、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』はまさにその疲れた人々のドラマだ。物語の後半、主人公の上司(カン・ギヨン)が出張先の済州で風を浴びながら涙を流すシーンはそれを象徴していた。

 自閉スペクトラム症というハンディを背負いながらも新米弁護士として奮闘する主人公(パク・ウンビン)の周囲は、チームプレイで自己実現しようとする者たちと、人を蹴落としてでも成功しようという者たちが混在しているが、多くの場合、勝利するのは「for the team」志向の者たちだった。それがこのドラマの救いであり希望でもある。

 全16話のなかでも忘れられないキャラクターは、9話の子供解放軍・総司令官(ク・ギョファン)。まだ小学生なのにスペック戦争に巻き込まれている子供たちを救うため大胆に行動する人物だ。現実味に欠ける話と言われるかもしれないが、こんなおとぎ話のようなストーリーに感情移入してしまうほど、我が国のスペック戦争は苛烈である。

済州、漢拏山ふもとの緑のトンネル。心身ともに疲れ切った上司(カン・ギヨン)が涙を流したのはこんな場所だった

●クライムサスペンス『ナルコの神』(全6話)

『ナルコの神』では、家族のために海外で稼ごうとしただけなのに、国際的な事件に巻き込まれてしまう主人公(ハ・ジョンウ)もよかったが、ギラっと光ったのはやはり名優ファン・ジョンミンだ。

 映画『最後の狼』(2004年)や『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年)で確立された純情青年路線から、『新しき世界』(2012年)、『哭声/コクソン』(2015年)、『アシュラ』(2016年)、『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(2018年)などで暗黒街の顔役路線へ舵を切って成功。『ナルコの神』では牧師と麻薬王のジキルとハイドをのびのびと演じた。

 また、本作では『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で家族愛を象徴する小道具として使われたキンパ(韓国式の海苔巻き)が、また別のかたちで効果的に使われている。そこも見どころである。

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で注目を集めたキンパは、『ナルコの神』にも登場する