●ミステリーサスペンス『シスターズ』(全12話)
ドラマもプロレスも一人の優れたヒール(悪役)がいれば成功するといわれている。その好例が、ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』で主人公(イ・ヨンエ)を苦しめたチェ尚宮(キョン・ミリ)だ。
『シスターズ』でその役目を果たしたのは、大統領を目指す弁護士の夫(オム・ギジュン)を裏で操る妻(オム・ジウォン)。我が国のドラマらしく、物語の核は富者(부자/プジャ)vs貧者(빈자/ピンジャ)の戦い。言い換えればやはりスペック戦争がテーマとなっていた
ホン・サンス監督の『よく知りもしないくせに』( 2009年)のメンハラ女子役で、早くも ” 恐怖女帝 ” の萌芽を感じさせた彼女の、優性思想を背景とした恐怖支配の演技は、主役のキム・ゴウンやウィ・ハジュンをときに圧倒していた。
●お仕事コメディ『エージェントなお仕事』(全12話)
『エージェントなお仕事』は、芸能界を舞台に、俳優マネジメント会社で働く人々の物語。本作もやはりベースにスペック戦争がある。
わがままな俳優や競争心の強い同僚たちの板挟みになる上長(イ・ソジン)や新入社員(チュ・ヒョンヨン)の奮闘記なのだが、毎回、有名俳優が実名でゲスト出演したりするので全体的な印象は軽快で、年末年始に鑑賞するのにぴったりだ。
本作の原題が『연예인 매니저로 살아남기(芸能人マネージャーとして生き残ること)』であるように、苛烈な競争社会で闘い、消耗し、破れ去っていく人々が多く登場するのだが、故郷の家族が彼らを支えている場面がしっかり描かれている点が救いになっている。
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のトン・グラミ役で注目を集めたチュ・ヒョンヨン扮する新入社員が、テレビ電話で釜山の母親に慰められるシーンや、仕事も恋愛も問題山積のチーム長(クァク・ソニョン)が全羅道・海南の実家に帰ったとき、父母にあれこれ世話を焼かれるシーンはその好例である。
*チョン・ウンスク来日トークイベントのお知らせ
本コラムの筆者チョン・ウンスクが3年ぶりに来日! 2023年1月7日(土)に名古屋の栄中日文化センターでトークイベントを行います。
1部 15:30~17:00 講座「ソウルの変化」(消えたもの、生まれたもの。新業態、新製品など)
2部 17:30~19:00 情報交換会(日本のみなさんの韓国ロスの癒し方や、久しぶりに訪韓した人の目に映った韓国の姿などを聞きます。また、講師が半年がかりで取り組んできた新たな仕事についても話します)
詳細とお申し込みは下記(栄中日文化センター)へ。
https://www.chunichi-culture.com/programs/program_166125.html