韓国のドラマや映画が国際的に脚光を浴びるようになって20年が経過したのを機に、時代ごとに輝きを放った名優たちの活躍を振り返るシリーズ連載。

 その2回目は2000年前後に活躍が目立った俳優4人、チョン・ドヨンソル・ギョングソン・ガンホイ・ビョンホンを取り上げる。

■庶民派アイドルから大女優へ成長したチョン・ドヨン

 チョン・ドヨン(1973年生まれ)は1990年代にドラマで活躍した可愛い女優というイメージが強かったが、いつのまにか押しも押されもしない大女優になっていた。

 彼女のすごさは共演した男優(その多くが劇中の恋愛対象)の顔ぶれからうかがえる。下のリストを見てほしい。年下のコン・ユ(『男と女』)から、年上のソン・ガンホ(『シークレット・サンシャイン』)まで多くのトップ男優の相手役を務めている。こんな女優は他に見当たらない。

チョン・ドヨンが映画で共演した恋愛、結婚対象役の男優たち

 筆者がおすすめするチョン・ドヨンのベスト3は、天真爛漫な田舎娘役がハマった2作『我が心のオルガン』(1999年)と『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~』(2004年)。そして、息子を誘拐され精神的に追い詰められた母親役が真に迫っていた『シークレット・サンシャイン』(2007年)だ。

 彼女も50歳に手が届こうとしているので、今後ラブストーリーへの出演は少なくなっていくかもしれないが、ちょうど今、ユン・ヨジョン(『ミナリ』『パチンコ』)が演じているようなキャラクターも彼女ならまた違った味わいで演じてくれそうだ。

『初恋のアルバム 人魚姫のいた島』でチョン・ドヨンが扮した海女の家(済州牛島

■『チャサンオボ』や『キングメーカー』で復活したソル・ギョング

 ソル・ギョング(1967年生まれ)の初主演映画であり、初期の代表作である『ペパーミント・キャンディー』(2000年)は、今でもファンが多く、韓国では作品自体のファンクラブが存在する稀有な映画だ。

 当初はイ・チャンドン監督の前作『グリーンフィッシュ』のハン・ソッキュが主人公を演じるはずだったが、別の映画の撮影が重なってしまったため、当時まだ主役経験のなかったソル・ギョングが抜擢された。結果は韓国映画ファンご承知の通り。20歳から40歳までの各年代を生々しく演じ、韓国映画史に残る作品となっている。

『ペパーミント・キャンディー』のハイライトシーンが撮影された忠清北道堤川市白雲面にある鉄橋

 これを機にオファーが殺到し、『公共の敵』(2001年)、『オアシス』(2002年)、『ジェイル・ブレーカー』(2002年)、『シルミド』(2003年)などヒットを連発。この頃は同年代のライバル的存在のソン・ガンホより格上の感があった。

 その後、持ち前の屈折したキャラクターから役の幅を広げようとしたせいか、低迷期といっていいくらい大ヒットには恵まれず、2000年の『殺人の追憶』のヒットでスターの座を決定的にしたソン・ガンホの後塵を拝するようになった。

 しかし、2021年の『茲山魚譜 チャサンオボ』のチョン・ヤクチョン役や、イ・ソンギュンと共演した2022年の『キングメーカー  大統領を作った男』のキム・デジュン役で、再びソル・ギョングらしさを見せ、”復活”を感じさせている。