■最新映画『別れる決心』でランクアップ!肩の力の抜けた名優パク・ヘイル

 パク・ヘイル(1977年生まれ)は、突き抜けたスターとはいえないが、2001年の映画デビュー以来、コンスタントに主役を張り、存在感を示し続けている俳優だ。最近はカンヌ国際映画祭で監督賞を、韓国で青龍賞主演男優賞などを受賞した『別れる決心』(2022年)に主演し、さらにランクアップした印象だ。『別れる決心』は日本で2月17日(金)から公開される。

 パク・ヘイルが最初に注目されたのは2003年の映画『殺人の追憶』。田舎刑事(ソン・ガンホ)と都会刑事(キム・サンギョン)の二人に厳しく追及される容疑者を演じたパク・ヘイル(当時20代半ば)はなんとも美しく、その澄んだ瞳の奥に潜むものへの想像をかきたてられた。

 もうひとつ、彼らしさが発揮された映画が『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』(2014年)だ。パク・ヘイルが扮したのは先輩の葬儀のために帰国した北京の大学教授。社会的地位もある中年男がバックパックにTシャツという軽装で、慶州の古墳群の中を自転車で走ったり、美人女将(シン・ミナ)のいる韓式カフェで中国茶を飲んだり、見知らぬ人たちとカラオケボックスに行ったりする。

 自己主張らしいことはほんどしない、きわめて影が薄い男なのだが、誰もが一度はこんな旅がしてみたいと思わせる気ままな旅行者役が大変魅力的だった。

2019年に日本で封切られた主演映画『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』の公開前インタビューを受けるパク・ヘイル。共演はシン・ミナ。同作は日本でDVD発売中。写真提供:A PEOPLE
『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』でパク・ヘイルやシン・ミナが歩いた古墳群

■存在そのものが映画のような女優ペ・ドゥナ

 171センチの長身、個性的な顔立ちと声質で、ペ・ドゥナ(1979年生まれ)は存在そのものが映画のような人だ。山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』(2005年)、是枝裕和監督の『空気人形』(2009年)に出演していることもあり、日本での認知度も高い。

 彼女が最初に日本で注目されたのは、韓流ブームが起きる2年ほど前に公開された映画『子猫をお願い』(2001年)だ。明朗快活だが、理不尽なことにははっきり「No!」と言う二十歳の娘役は可愛らしく、清々しかった。

 2006年の映画『グエムル-漢江の怪物-』の水原市庁勤務の公務員役も印象的だった。アーチェリーの選手なのだが本番に弱く、金メダルを逃してしまうが、物語のハイライトでダメな兄(パク・ヘイル)を尻目に金メダルに匹敵する見せ場を作るシーンは痛快だった。

『グエムル-漢江の怪物-』でぺ・ドゥナが潜んでいた漢江の橋

 つかみどころのない女性の役が多い印象だが、2012年の映画『ハナ 奇跡の46日間』の北朝鮮の卓球国家代表選手は意外なハマリ役だった。国家に対する忠誠心は揺るぎないのだが、情にもろい一面もある。そんな心の揺れをみごとに演じ切っていた。

 若い頃に演じた役柄から、いつまでも “不思議ちゃん” のイメージが抜けなかった彼女だが、いつのまにか40代半ばに達しようとしている。年齢を重ねても魅力を失わないタイプの女優なので、これからの演技も楽しみだ。

(「2010年以降」編につづく)

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